第290回「1号機の解体撤去は絶望的に:福島原発事故」

 福島第一原発で事故を起こした1〜3号機の炉心状況について《溶融燃料、コンクリ床浸食=格納容器内で最大65センチ−東電が推定公表・福島第1》(時事通信)との報道がありました。炉心溶融で核燃料が圧力容器から溶け落ちたけれど、下の格納容器コンクリート床を浸食しただけで外部には出ていないと主張しているのです。しかし、東電の期待を込めた最善の推定でも、少なくとも1号機の解体撤去は絶望的に見えます。チェルノブイリ原発のように永遠の管理を強いられるでしょう。  上の図は最も溶融が進んだ1号機の状況説明です。「1号機は『相当量』、2、3号機は一部の溶融燃料が原子炉圧力容器から格納容器に落下したと推定。床面のコンクリートを1号機では最大65センチ浸食した可能性があるが、いずれも格納容器内にとどまっており、注水で冷却されているとしている」

 東電の「福島第一原子力発電所 1〜3 号機の炉心状態について」は多くをコンピュータシュミレーションから割り出しています。格納容器内は恐ろしい高線量で現場を確認するすべがないからです。計算の前提を変えれば結果はいくらでも変わる不確かさが再三、注記されています。読んでいくと、炉心溶融を起こして格納容器に落ちてくる際、床に水があって冷やしたかどうかが分かれ目のようです。

 格納容器の床には本来は水はありません。添付資料12「コア・コンクリート反応による原子炉格納容器への影響」には、水があった説明として圧力容器の水が漏れ落ちてくるとしています。「原子炉冷却材再循環系ポンプのメカシール部には、炉水が原子炉圧力容器バウンダリ外へ流出しないようシール水が供給されている」「全交流電源の喪失に伴いシール水を供給している制御棒駆動系が停止したため、メカシール部から炉水が流出したと想定される」

 水が無ければ格納容器の底貫通まで進んでしまうと専門家はみていました。1号機の炉心溶融は早く3月12日未明ですから、シール部から漏れ出る程度で十分な水が溜まっていたかに疑問が残ります。格納容器貫通の可能性は消せません。溶融まで時間があった2、3号機では水があったとされています。

 この推定を受け入れたとしても1号機の解体撤去は非常に困難です。圧力容器の解体から始め、格納容器全体を水で満たして上部の蓋を開けなければなりません。格納容器が健全かにも疑問がありますが、圧力容器から上が撤去できても、床に食い込んだ100トンもある形状不明な核燃料溶融体を、水の中で遠隔操作で細切れに切断して運び出すのです。乱暴にやれば高汚染域が広がり、人が入れるように除染することも不可能になります。技術開発次第とは、とても言えません。

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