SPEEDIデータ隠しで乳児を犠牲にした政府 [BM時評]

 食品大手「明治」が製造した乳児用の粉ミルクから1キログラム当たり最大30.8ベクレルの放射性セシウムが検出された問題で、日刊スポーツは《粉ミルク、乾燥工程でセシウム汚染か》と伝えました。政府が原発事故時には発表すべき緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」のデータを隠した結果、明治・埼玉工場(埼玉県春日部市)が高濃度の放射能の雲通過を全く警戒しないで乳児向けミルクを造ってしまったのです。

 「工場内に取り込んだ大量の外気に液体の乳原料を霧状にして当てて乾燥させ、粉ミルクに加工している。今回放射性セシウムが検出された製品は、福島第1原発事故直後の3月14〜20日にこの乾燥工程があった」「原乳を粉状にした原材料は北海道や米国、オーストラリア、欧州から工場に搬入。水と栄養分などを混ぜて再び液体にし、約200度に熱した空気に当てる」と報じられています。

 賞味期限は「2012年10月」で40万個の無償交換を申し出ていますが、なるべく新鮮な製品を与えたい親の心理を考えると既に消費された恐れが大でしょう。乳製品の国の暫定規制値である1キロあたり200ベクレルは下回っているものの、放射能に感受性が高い乳児には遙かに低い基準が必要と考えられます。

 放射能の拡散データを集め、分析している「早川由紀夫の火山ブログ」から「汚染ルートとタイミング(9月30日改訂)」を引用します。  明治・埼玉工場は春日部市役所の近くにあり、3月15日の「群馬ルート」が問題の製造工程と合致します。「この放射能の雲の下に膨大な人がいた事実に戦慄」で「3月15日には原発周辺から放射能の雲に沿うルートで大量の避難民が逃げた惨状がありました。程度の差こそあれ首都圏でも事情は同じだったのです。本来ならば外出を制限して屋内に止まるよう努めるべきでした。半年遅れでこのような地図を見せられると、この国は主権者である国民のことなど何も考えていないと改めて思わされます」と指摘した怒りが蘇ります。

 このルートでは雨が少なかったので埼玉や東京都心などの放射能沈着量が目立ちにくいのですが、実際には相当に高濃度の放射能の雲が通過していたことが粉ミルク製造禍から逆に証明されました。放射能がどの方角に拡散するか予測するSPEEDIは、まさにこうした局面用に備えた仕組みだったはずです。

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