原価知らずに電気料金を認可してきた経済産業省 [BM時評]

 「東電の利益 9割は家庭など向け部門」(NHK)などの報道が一斉に東電の収益構造のいびつさを問題にしています。この一般消費者に強く大企業に弱い体質は酷いと思いますが、驚くべきは電気料金を認可してきた経済産業省が原価を把握していなかった点です。この料金でいくら利益が出るのか知らなかったとは、原価に適正な利益分を上乗せして認可する電気料金の仕組みが全く機能していなかったのです。

 「電力会社10社の電気事業からの利益は、平成22年度までの5年間の平均で、大口の企業など向けの部門が31%だったのに対し、販売電力量に占める割合が38%しかない家庭など向けの部門が69%を占めているということです。中でも東京電力は、大口向けからの利益が9%であるのに対し、家庭など向けからの利益は91%を占め、家庭など向けに利益を大きく依存していることが分かりました」

 これに対して枝野幸男経産相はフジテレビで「ようやく、この利益割合の具体的な数字が、経産省も初めてわかった。これは、さらに透明性を高めさせないと、とてもじゃないけど世の中は納得しない。わたしも納得しない」と述べたそうです。冗談ではありません。具体的な中身の数字を知らないで認可してきたとの告白ですよ。

 昨年末の「東電の電気料金『私物化』は過去まで遡り返済を」で指摘したように、朝日新聞が過去10年間で東電が6000億円も高く見積もっていたと報道し、東京新聞が発電と無関係な福利厚生費計上や社員健康保険料の2割転嫁などの不正を伝えています。こうした報道内容に相当する不正分の是正があったとも聞きません。

 東電が悪質で巧妙な操作をしていると思ってきましたが、今回分かった事情は監督する経産省が原価明細はもちろん総額もきちんと突っ込まずに電気料金認可してきただけの話でした。歴代の経産省幹部は東電と連帯して過去の不正分の弁済をすべきだと考えます。