原発丸投げ政府と危うい規制委、再処理工場 [BM時評]

 福島原発事故から1年半、原子力政策を転換する大きな節目が来ているのに、開いた口がふさがらない展望の無さです。民主党政権は脱原発、2030年代の原発ゼロを掲げるエネルギー戦略を閣議で決定しませんでした。一方で建設中の3原発はそのまま続行させ、停止中の原発再稼働は新たに発足した原子力規制委員会に丸投げしました。その規制委の発足記者会見では新安全基準への道筋がまるで見えません。原発ゼロなのに維持を決めた核燃サイクルの基幹である六ケ所再処理工場がまた完工延期を決め、出来たとしても当初予定から16年遅れの体たらくです。

 東京新聞の「原発ゼロ ズルズル後退 エネ環戦略 閣議決定せず」は「原発ゼロ戦略の閣議決定を見送ったのは、脱原発を打ち出した戦略に反発を強める経団連などの経済界や原発関連施設立地の自治体、米国などに配慮し、政策の調整の余地を残すためとみられる」と伝えます。原発運転期間を40年に限ることも明記していたのですが、建設中の原発続行を経済産業相が認めたために2030年代に運転ゼロの目標も怪しくなっています。

 NHKの「姿勢問われる原子力規制委員会」は率直な疑問をいくつも投げています。「規制委員会が安全性をどのような方法で評価し運転再開を判断するのかは示されていません」。事務局である「原子力規制庁の職員の8割以上は原発事故で『専門性の欠如』や『初動の対応のまずさ』を指摘された保安院と原子力安全委員会の職員です」

 政府と国会の事故調査委が出した福島原発事故の原因は違っています。政府の従来の暫定基準と違って新安全基準には、その原因を反映させざるを得ません。原因を確定する道筋すら見えません。

 来年10月を完工と延期した六ケ所再処理工場にも、1989年に事業申請した当時とは環境が激変していると指摘せざるを得ません。例えば、本格運転が始まると使用済み核燃料棒を切り刻んで溶かすために、放射性の希ガス「クリプトン85」だけで年間33京ベクレルを環境に放出します。1京は1億の1億倍です。トリチウムなどの放出も桁はずれです。福島原発事故を経験した国民は食品1キロ当たり10ベクレル単位の放射性物質に敏感になっています。この状況で、完工したから運転ですと認められるか、大きな疑問があります。

 【参照】】特集F1「核心曖昧な事故調報告は安全基準再建に障害」
   インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー