第334回「原発事故責任者の1人と自覚が無い安倍首相」

 安倍晋三首相が原発の新増設に積極的な姿勢を示しています。福島原発事故に自分は何の責任も無かったと錯覚しておいでです。いや6年前、第1次安倍内閣で大地震で炉心溶融など検討もしていないとしました。毎日新聞の《安倍首相:「国民的な理解を得て」…原発新増設に前向き》などメディア報道は噴飯モノの極みです。公明党が新増設を渋っているとか、事態の本質ではありません。2006年の衆議院、吉井英勝議員の質問主意書安倍首相の答弁書が鮮やかに事情を語ってくれます。

 この質問主意書は福島原発事故で核心になった「大規模地震時の原発のバックアップ電源」問題を取り上げています。1981年、スウェーデンのフォルクスマルク原発の事故で「バックアップ電源が四系列あるなかで二系列で事故があったのではないか」「日本の原発の約六割はバックアップ電源が二系列ではないのか。仮に、フォルクスマルク原発1号事故と同じように、二系列で事故が発生すると、機器冷却系の電源が全く取れなくなるのではないか」「停止した後の原発では崩壊熱を除去出来なかったら、核燃料棒は焼損(バーン・アウト)するのではないのか。その場合の原発事故がどのような規模の事故になるのかについて、どういう評価を行っているか」と迫りました。

 当時の安倍首相が提出した答弁書は木で鼻をくくったも同然です。「我が国の原子炉施設は、フォルスマルク発電所一号炉とは異なる設計となっていることなどから、同発電所一号炉の事案と同様の事態が発生するとは考えられない」「地震、津波等の自然災害への対策を含めた原子炉の安全性については」「経済産業省が審査し、その審査の妥当性について原子力安全委員会が確認しているものであり、御指摘のような事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである」。燃料焼損と炉心溶融のような事態については「経済産業省としては、お尋ねの評価は行っておらず、原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである」

 これを見れば、安倍首相が福島に視察に行って、まずすべきは自らの不明を詫びて土下座しての謝罪です。それがなされなかったどころか、福島から帰京したら《今後の原子力政策について「新たにつくっていく原発は、40年前の古いもの、事故を起こした(東京電力)福島第1原発のものとは全然違う。何が違うのかについて国民的な理解を得ながら、それは新規につくっていくことになるのだろう」と述べ、新増設に前向きな考えを示した》では、普通は人間性が疑われます。

 原子力専門家の安全へのチェックが甘かったのはどうしてか、政治がどうして見過ごしたのか、政治が為すべき点は無かったのか――福島原発事故の問題点を政治家の視点から見直し真摯に検証すれば、最新原発だから安全などという愚かな視点は出てきません。

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