台湾に鳥インフルエンザ、中国含め警戒弱すぎ [BM時評]

 鳥インフルエンザが遂に中国国外に出てしまい、24日に台湾の男性(53)が発症確認です。男性は重体となり、ヒトからヒトへの感染が確認されていないからと言って、中国本土を含めて警戒体制が弱すぎます。インフルエンザウイルスは変異を繰り返し、環境に適応進化するものです。

 時事通信が伝えた《台湾で患者を初確認=中国本土外に拡大、江蘇省で感染か―鳥インフル》によると、「男性はビジネスで蘇州と台湾を往来。直近の蘇州滞在は3月28日〜4月9日で、上海経由で台湾に9日戻り、3日後の12日から発熱や発汗、体のだるさなどの症状が出た。16日に入院したが、19日夜から病状が悪化したため、隔離された。いったんは陰性反応が出たが、24日の検査で陽性と確認された」となっています。

 重体になっている経緯からから考えると、発症初期に投与すべき抗ウイルス剤使用のタイミングを失しています。ウイルスが大量に増殖してからは効果がないために、このような危機に瀕しては抗ウイルス剤で積極的に叩いて、流行に至る芽を摘まねばなりません。台湾と中国の人的交流の膨大さを考えると衛生当局はスタンバイすべきでした。日本もようやく強制的な入院などを可能にするよう動き出しました。

 中国では新たに22日に山東省にも感染が飛び火、2市5省に拡大しました。36歳の建材卸売従事者で発熱と咳が6日間続いてから病院に行き、鳥インフルエンザウイルスH7N9型陽性の判定が出ました。第356回「感染爆発寸前、鳥インフルエンザの困った事情」で指摘したように、医療費の心配があって大流行が心配されるのに積極的に受診しない人が多いとも考えられます。これでは流行初期に叩くことは覚束なくなります。

 また、『鳥インフルエンザ感染源の探索は方向違いか』で感染源を鳥類と決めつけるのは危険と紹介しました。中国の患者の半数は生きた鳥と接触していませんし、新たな台湾の患者も同様です。

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