安倍政権が嫌いな雇用安定こそ少子化対策の核心 [BM時評]

 少子化対策を検討している政府の有識者会議が報告書をまとめたとの報道に唖然としました。結婚を増やすには正規雇用を増やして雇用を安定させるしかありません。安倍政権が狙う雇用流動化こそ少子化促進です。報告書が重視する結婚の後に来る妊娠・出産の支援、子育て支援は確かに必要ですが、まず多くの未婚者に結婚してもらわねば話になりません。この報告書は一番の基本について何も考えない欠陥品です。

 昨夏にリリースした第314回「非正規雇用にある男性の半分は生涯未婚か」で以下のグラフを「平成22年社会保障を支える世代に関する意識等調査」から引用しました。  グラフにある非正規雇用40代男性の未婚率45.7%は、国勢調査で得られているデータを勘案すると実際には50%を軽く超えると考えられます。この世代が今後、結婚する可能性はとても低く、生涯未婚のままで終わりそうなのです。正規雇用40代男性の未婚率15.1%との差は歴然です。本当に少子化対策を考えるならば、非正規雇用が3分の1にも達した実情から出発すべきです。

 NHKの「少子化対策の報告書まとまる」はこう伝えました。《報告書によりますと、「わが国は、社会経済の根幹を揺るがしかねない『少子化危機』ともいうべき状況に直面している」として、「子育て支援」と「働き方改革」の強化、それに「結婚・妊娠・出産支援」の3本の矢で緊急対策を推進するとしています》

 話題になっていた女性手帳の配布など、少し事情に通じていれば少子化対策に効かないと分かります。《「働き方改革」では、企業に対して、役員や管理職への女性の登用を進め、その状況を開示するよう働きかけるほか、男性の子育て参加に向けて、長時間労働の抑制や多様な働き方の導入を促進するとしています》とか、非正規雇用が若い世代では2分の1にもなっている現状からは虚しい議論です。安倍政権は労働者を解雇しやすくし、労働市場の流動化を図ろうとしているのですから、有識者会議は背後から鉄砲を撃たれていると知るべきです。

 【参照】インターネットで読み解く!「生涯未婚」関連エントリー