第375回「クロマグロ規制を好機に漁業資源持続へ転換を」

 北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)が強力な資源回復策を勧告すると伝えられています。日本が逃げてきた本格的な漁業規制を始める好機と受け止めて、クロマグロに限らぬ漁業資源持続利用へ行動を起こす時です。乱獲漁業が続けば国際的な研究で21世紀半ばには世界の食卓から魚が消えるとの予測があり、現実にニホンウナギが日本の食卓から消える日が見えてきつつあります。国際的な監視の枠組みを持たないニホンウナギは警鐘を鳴らす時期を失しました。クロマグロは下の地図で示す日本の海で生まれ、回遊するのです。数百グラムしかない幼魚ヨコワを採って食べる食習慣を抑制するだけで資源回復効果はあるはずです。(地図引用元  東京新聞の《太平洋クロマグロ規制へ 漁獲量削減を勧告 国際機関》はこう報じています。《報告書を受け、関係国は年末に開かれる資源管理機関の「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」総会で対策をまとめる。厳しい国際規制の導入は避けられない情勢となりつつある。報告書は特に近年、漁獲の大半を占めている若い魚の漁獲量削減を求めた》

 幸い日本はクロマグロの完全養殖で先行していて、採卵条件を制御できる陸上大型養殖施設がこの夏、稼働を始めました。海中の産卵では自然条件調整が難しく、当たり外れが大きかったのですが、陸上養殖でうまく行けば大量の幼魚を自前で用意して養殖に使えるようになります。

 長崎新聞の《陸上採卵施設にマグロ搬入》が詳しく伝えています。《採卵用親魚になる2歳の「成魚」が搬入された。卵を計画的に安定採取する技術開発を目的に、7月3日から本格稼働する。4年後をめどに、年間1千万粒の採卵を目指している》《主施設の試験棟には、産卵に適した水温や光などを調整できる直径20メートル、深さ6メートルの大型水槽を2基設置。各水槽に成魚約100匹を収容し、2年ほどかけて産卵可能な「親魚」に育てる。採取した受精卵は、西海区水産研究所奄美庁舎(鹿児島・加計呂麻(かけろま)島)へ空輸し、海面いけすで成魚まで育て再び長崎庁舎へ戻す》

 世界のマグロ資源では大西洋と地中海のクロマグロ、インド洋のミナミマグロが深刻な資源枯渇に直面しています。日本が大量に輸入し、新興国でも食べられ始めたからです。太平洋もこれに続く今回の事態ですが、まだまだ資源量がある今だからこそ持続可能な漁業への転機にすべきです。大西洋マグロの危機が表面化した2010年に『クロマグロ禁輸で漁業と水産養殖を見直せ』で「マグロだけに気を取られてはいけない」と訴えました。「世界の海産食品資源は1950年に利用できたものの29%が2003年時点で失われており、残ったものも2048年までにはすべて消えてしまうだろう」との予測を、2013年の今、噛み締めてみるべきです。中国漁船の乱獲などでいっそう海洋資源は悪化している現実があります。