第422回「幼魚豊漁で失われる水産資源、異を唱えぬ鈍感報道」

 将来に向けて持続可能性が特に疑われている水産資源クロマグロとウナギの幼魚・稚魚が豊漁との報道が今年に入って続きます。豊漁ならば自主規制してでも資源を残せとなぜ訴えないのか、鈍感マスメディアに呆れます。本気で漁業資源を守ろうとしたら漁獲の総枠を規制した上で、個別の漁業者にも漁獲枠を与えるしかありません。個別枠が無ければ早採り競争に陥って幼魚でも捕ってしまうからです。個別枠の範囲で値段が良い大型成熟魚を狙うようになったノルウェーではサバ資源が回復し、今秋から漁獲枠倍増が伝えられました。

 昨12日には《季節外れの豊漁 富山湾でメジマグロ》で「県内ではメジマグロは十二〜二月に多く揚がる。四月の水揚げ量は少なく、過去十年間平均で約四トンだが、今月は既に十四トンを上回っている」と報じられています。

 3月に水産庁がクロマグロの漁獲規制を日本独自に強化する方針を発表したばかりでした。国際会議で訴えて同調を求める方針です。関東などでメジ、関西でヨコワと呼ばれる幼魚の漁獲量を来年から2002〜04年基準の半分にする規制を前提にすれば、自分の首を絞めるも同然な「いま取れる魚は取ってしまおう」とする漁業者の言い分を記事にして、幼魚豊漁と喜んでいては困ります。昨夏の第375回「クロマグロ規制を好機に漁業資源持続へ転換を」で掲げたクロマグロ産卵海域の地図を再録します。  ウナギについては研究者から『シラスウナギの豊漁報道の異常性』(勝川俊雄公式サイト)と問題提起されています。今年の「豊漁」は極端に不漁だった最近ではやや多かったに過ぎず、《漁業先進国の基準からすると、日本のシラスウナギは、漁獲を続けていること自体が非常識》《日本メディアは、資源が枯渇した状態を基準に、少しでも水揚げが増えたら「豊漁」とメディアが横並びで報道しています。このように、目先の漁獲量の増減に一喜一憂するということは、水産資源の持続性に対する長期的なビジョンが欠如している》と厳しい指摘です。

 マグロとウナギ、日本の漁業規制は依然として中途半端です。新たなクロマグロ幼魚規制も具体的な削減方法を漁業関係者と協議することになっていて、ノルウェーのような先進的な規制が出来るか疑わしいものです。2006年の『世界規模での漁業崩壊が見えてきた』で、「21世紀半ばにスシが食べられなくなる」国際研究チーム予測などを取り上げました。あれから時が経過して、中国の遠洋漁業進出など世界規模で乱獲はますます酷くなっています。水産国日本のマスメディアには、この大状況を頭の隅に置いてもらわねば困ります。

 【参照】第305回「必死の養殖増産で人口増を賄う水産資源は限界」