第453回「勘違い知事発言の川内再稼働は大きな禍根になる」

 鹿児島・川内原発の再稼働をめぐって恐るべき知事発言が飛び出しました。原発過酷事故が発生しても住民避難の必要は無いと言い切ったのです。避難計画の不備対処に注目していたら実は全くの勘違いをされていました。原子力規制委員長は当初から規制基準審査のパスと住民避難計画整備はセットになるとの認識を示しています。実効性がある住民避難計画が出来ないで再稼働は許されないと、はっきりさせるべきです。監視役のマスメディアがこれをいい加減にしている点が非常に不可解です。

 毎日新聞の《川内原発再稼働同意:「命の問題発生せず」鹿児島知事》が最も詳しく再稼働に同意する伊藤祐一郎知事の発言内容を伝えています。

 《原発事故への不安については「福島であれだけの不幸な事故が起きた。安全神話が全部崩れたのは確かだ」との認識を示しながらも、原発事故後に設けられた国の新規制基準を高く評価。原子力規制委員会の指針や九電の評価を引用し、事故が起きても原発から5.5キロの放射線量は毎時5マイクロシーベルトだとした上で「避難の必要がない。普通に生活してもいい」と述べ、「もし福島みたいなことが起きても、もう命の問題なんか発生しない」と明言した》

 毎時5マイクロシーベルトなら年間積算で50ミリシーベルトに迫りますから、避難の必要が無いとするのは極端に安全と考える専門家だけでしょう。現実にこの線量値を示されたら大多数の住民は必要無いと言われても逃げ出します。しかも原発事故の特性上、確率は低くても福島事故以上の放射能流出はないと言い切れません。どんな重大事故になっても毎時5マイクロシーベルトまでと保証できるはずがありません。防護バリアが破られる確率を低く出来ても絶対に破られないとは言えず、その時のために住民避難計画が要るのです。

 朝日新聞の《30キロ圏外へ住民9割避難、最大28時間 川内原発》はこう報じています。《鹿児島県は29日、原子力規制委員会の優先審査が進む九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)で重大事故が起きた際の住民の避難シミュレーションを公表した。30キロ圏内の21万5千人の9割が圏外に逃げる所要時間は9時間15分〜28時間45分。だが全員が圏外に避難を終えるのにかかる時間や、市町別の避難時間は試算していないとして、公表しなかった》

 避難は全員が逃げてこそ完了するとの常識が鹿児島県には欠けています。不思議な県だと思っていたら、避難する必要が無いと考えていたのですから驚きです。『原発事故時の避難計画、具体化するほど無理目立つ』で指摘したように避難計画を仕上げるのはとても困難です。川内原発が先例になって避難計画など不要となったら大変です。

 川内再稼働には火山学会からも火山噴火の予知が出来ると決めつけるのは問題とのクレームが付きました。第386回「前のめる原発再稼働:新規制基準なら万全と錯覚」にあるように政府も再稼働を求めるだけで十分な手を尽くしていません。こんな状態で地元同意の手続きが終わった、再稼働に突っ走るだけになってよいはずがありません。