小泉郵政解散へ賛成論と反対論まとめ(20050825)
 今回の衆院解散について、ブログで書かれている膨大な賛否両論から読むに価するものを拾って記録しておくことにした。両論に入る前に、政治学で英国留学中に書かれている「郵政民営化:小泉政治が日本の政治文化に与えた影響」(かみぽこぽこ。) を読んで小泉首相と反対派とをイーブンに見て欲しい。「小泉首相と反対派は、激しく罵倒し合っていたけれども、『民主主義とはどうあるべきか』について、乱暴な言葉使いながら理論闘争をしていたという見方もできる」「もう少し大きく捉えると、これまで『ボトムアップでコンセンサスを得ながら物事が決まっていくのが民主主義』と考えられていた日本で初めて、『国民の信認を得た政府がトップダウンで物事を決めていくのが民主主義』という考えが出てきた、ということだと思う」

  ◆賛成論◆

 今回の郵政民営化法案は、民営化の将来像が十分に描けておらず、賛成論の方も認識している。「衆議院解散の意味」(ロンドン投資銀行日記)は「実際問題としては、今回議案に上がっていた郵政民営化法案はどちらかというと三事業の区分を明確にするというレベルのものであって本格的な民営化からは程遠かった」としつつ「今回の一連の郵政民営化のポイントは、ちょっとでも郵政民営化の改革を進める気がある、つまりは日本の金融部門そして引いては企業と金融の健全な関係の確立と日本経済の再生を進める気がある政治家が誰で、利権と票集めにしか頭が回っていない無責任な政治家が誰かを見極める踏み絵になったと個人的には見ている」と主張する。「踏み絵」の機会を作ったことに多くの方が賛意を表明している。背景は失われた十年、いや十数年、分かっていながら進まない本質的な改革に、絶望的な思いすら広がってきたことだ。

 「なぜ、郵政公社を民営化するべきなのか?」(趣味のWebデザイン)は呼びかける。「今回の選挙で問われているものがあるとすれば、それは国民の意識です。郵政を民営化して、私の明日の生活にどんな利益があるのか? 田舎でサービスが低下するんじゃないのか? そんなことばかり考えている国民は、どうぞ民営化反対論者に与したらいい」「郵政民営化の先にある真の大改革とは」「年金支払額のアップと給付額のダウン、医療補助の削減と保険料の上昇、大増税と行政サービスの大幅な低下です。戦後の混乱期を乗り越え、高度経済成長を達成してからの30年間、問題を先送りしてきたのは誰なのか。それは国民自身です」

 この首相メッセージがどう届いたか。「衆議院解散(歴史的転換点)」(叡智の禁書図書館)は「8時台の総理の解散にあたっての記者会見を聞いて、ちょっと胸が熱くなってしまった」「率直に総理が考える政治指針を政治姿勢を国民に語りかけていると思った」「私達にとっては素晴らしい機会を手に入れたのだと思う。みんなが各人の判断で選んだ人が、まさに日本の未来を変えていくのだ」と、総選挙にわくわくしている。内閣支持率上昇は、法案の是非を越えて、政治の選択を密室の中で行わず、総選挙という形で国民に委ねたことが、個人の胸に響いたからだろう。

  ◆反対論◆

 郵政改革に従わぬ反対派を追い出し、本当に自民党を改革の党にするとの主張は額面通りだろうか――批判する側はそこにまず疑問を持つ。「郵政解散:小泉戦略の弱点は何か?」(ビジネス戦略を考える)は自民党という組織が変わる困難さを指摘する。「郵政民営化がすべての改革の入り口であるという論理は分りますが、改革が文化ではありません。必要な改革を果断なく生み出すことができる組織なら文化の一部と呼べるでしょう。それが見えないから、さまざまな批判も飛び出します。郵政民営化一点に絞った争点は、選挙戦略としては大変すぐれたものと思いますが、仮に勝ったからと言って自民党が改革党になるわけではありません。小泉戦略の弱点はそこです」

 このまま総選挙で勝たせたら独裁になるとの懸念が広がっている。「大切な選挙を『郵政民営化』だけで単純に投票するのか」(スローライフ日記)はこう主張する。「小泉は高い支持率をバックに本来なら良く考えて行うべき政策を即決でやってきた。自衛隊のイラク派遣などはその代表的なものだろう。『大量破壊兵器がある』といい理由で、きちんとした調査もせず自衛隊を派遣した」「開き直って自衛隊をイラクに置いたまま。『非戦闘地域』も『自衛隊がいるところだから非戦闘地域』挙句の果てには『私にわかるはずが無い』といい加減な答弁をしてそのまま」

 今回の郵政民営化法案そのものについて疑問を投げる人も多い。「小泉『郵政民営化』の変遷−市場原理主義者に丸投げの失敗」(世に倦む日日)を代表としたい。「自民党の議員たちが合意した『郵政民営化』は、二年前の郵政公社法の制定と施行までであり、彼らからすれば郵政改革は公社化で一段落着いた話なのである」「法案として確かな党内合意を取れないまま無理やり総務会にかけ、総務会を多数決で強行突破して衆院採決に持ち込み、今回の自民党分裂の政局にまで至ったのである。造反には理がある。小泉純一郎の失敗は『郵政民営化』を市場原理主義者に丸投げしてしまったことだ」

(注:原文を3分の1程度に圧縮しました) (了)

▼ご感想はメールで
8.目次 9.Top