血液型性格分類への信仰はどうなる(20041207)
 血液型による性格判断を扱うテレビ番組に行き過ぎがあり、放送倫理・番組向上機構(BPO)が「いじめや就職差別を生んでいる」との抗議をもとに民放各社に慎重な対応を求める――11月末に流れたニュースをきっかけに、12月に入っても多くのウェブ、ブログで肯定派と批判派とに分かれ議論がされている。性格から考えて娘の血液型に納得がいかず、再検査したお母さんとか実に様々。

 11月27日から5回連続で「AB型,B型の皆さん!立ち上がりましょう!!」を書いた「宇多津日記」あたりが批判派の急先鋒。歴史や研究を述べる3回目が「第二次大戦後ひとたび息をひそめていた血液型と性格をめぐる話が復活したきっかけは、1971年、姉が古川の教え子であった能見正比古の『血液型でわかる相性』(ISBN 4413011015) 以下一連の著作であった。能見の著作には著名人の血液型リストがしばしば掲載されており、それが主張に説得力を持たせることになったものと考えられる」と、血液型性格分類が力を得るようになったのは意外に古くないことを紹介している。

 自分が大学1年のときに取った心理学授業で経験したエピソードで、性格判断がいい加減か説明しているのが「quasi recitativo」の「マスコミの害悪:血液型番組」。

 「担当教授も当然同様でそれを示す為にある実験を毎年行っている。それは、教授が何型に見えるか、ということを受講者(約200人)にアンケートをとるのである」「果たして結果はというと、A型と答えた人約4割、O型約3割、B型約2割、AB型約1割と、日本人の血液型分布とほぼ同じ結果になった。教授の話によると、毎年だいたいこれに似た傾向になるとのこと」。学生が書いた判断理由は自分の血液型をもとに教授が似ているかどうか考え、似ていなければ俗説を援用して別の血液型にするパターンだそうだ。200人という母数は統計をとるには結構、有効な数であり、毎年、人口比と同じ結果になるのなら性格判断は効いていないことを示せる。

 もっと知りたければ、「ケータイ絵日記」が両派の専門家の論説などへの「血液型性格分析と疑似科学 リンク集&コメント 」を作ってくれている。肯定派なら性格への質問から血液型を当てる趣向のサイトもある。私の場合は確率最下位が正しい型だったが、ある程度、血液型性格説が頭に刷り込まれていると無意識に俗説に合った答えをしてしまう可能性もある。自分でそう信じ込むのは強い。ただし、この血液型ステレオタイプも8年間に4回約3100人ずつの大規模な調査にかけると、ほぼ見えなくなることがリンク先の研究紹介で述べられている。(もっとも研究者達は今後の研究で何か微細な差が現れる可能性までは否定しない)

 また、血液型性格分類への入れ込みぶりが尋常でないと思わせるデータがある。

 「憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向日記」の「バカだから血液型性格判断を信じているわけではない」は超常現象について「菊地聡(信州大学人文学部助教授)が関西の国立大学の学生を対象に調査を行った結果」を紹介している。血液型と性格の関連を9.7%が「確かに実在」、31.7%が「どちらかと言えば実在」と答えているという。「国立大学の学生だから、無知で頭が悪い、というわけではない。中にはいるかもしれないが、平均すれば標準以上だろう。それでも4割の人は『血液型と性格の関連』を肯定的にとらえている」となる。

 血液型への信仰を「無知だから」と言って改めさせるのは、確かに難しそうである。それでもマスメディアが悪のりして広めたものだ。タバコの注意書き以上に歯止めを強化して、歯車を戻す方法が全く考えられないものではないと思うのだが。 (了) ▼ご感想はメールで
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