インフル接種回数、「混乱」報道はメディアの無知(20091024)
 新型インフルエンザの予防接種回数をめぐり、16日の専門家会議で2回とされた方針の撤回が合意されて1回で済ませると報道されたのに、今週になって健康な成人以外はやはり2回に戻りました。毎日新聞の「新型インフルエンザ:ワクチン「原則2回」 行政判断で方針転換−−厚労省」は「足立政務官は19日の会議について、16日の結果に異論があったため新たなメンバーを指名したと説明し『科学的、医学的に正しいとされたものが、すべて行政判断にならない部分はある』と述べた」と伝え、あたかも政務官の非科学的なごり押しがあったかのようです。他のメディア報道もこのニュアンスを含んでいます。

 ところが、「新型インフル 議論そのものを公開 足立政務官ヒヤリング」(ロハスメディカル)を読めば、事情が逆であることが分かります。医師でもある政務官が専門家を招いて、200人の健康な成人に対して実施した臨床試験結果を、健康成人以外の対象にまで広げるのは無理であることを当たり前に議論しています。こういう議論の議事録がそのまま読めるようになったのも、政権交代の雰囲気かなと思えました。

 一般のブロガーは「新型インフルエンザのワクチン接種回数は何回?接種を受けられる時期は?」が「別の専門家を加えた会議を招集し、最終的にはまた『原則2回』と当初の方針に逆戻り。二転三転する方針に、医療現場からは困惑の声が上がっているそうです」と書いているようなに受け取ります。しかし、これはメディアの伝え方が悪いのです。いや、それ以上に上の議論を聞いたメディアの記者が議論の意味を理解できなかったとは、恐ろしく無知だと言えましょう。自分の頭で理解しないで「専門家」の発言を右から左に垂れ流すだけのジャーナリストなんか必要ない、と申し上げておきます。

 ロハスメディカルの記事は「緊急ヒヤリングは、大変に白熱して面白かった。しかし終了後の記者たちの顔を見ていると、金曜日の専門家会議について旧来型取材の常識に則って記事を書き、結果的に"誤報"とされて面白くなかったらしい」と皮肉っています。 (了)


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