第702回「日本野球がメジャーリーグを改造しつつある」

 
 米国メジャーリーグ(MLB)で日本人選手の活躍が報じられない日が無いほどです。これまで野茂英雄やイチロー、松井秀喜らの先達の活躍が伝えられてきたのと、今年はトーンが違います。2年前に年間121敗を喫した弱小チーム、シカゴ・ホワイトソックスをリーグ首位争いに持ち上げた村上宗隆選手(26)のサクセスストーリーを筆頭に、「日本人がいるチームは強くなる」と公然と言われ始めたのです。人種のるつぼアメリカでは優秀なスポーツ選手ほど個性的になりがちで、自分のエゴが表に出ます。甲子園大会を頂点にした高校野球で育てられた日本人選手に備わるひた向きさ、チーム勝利を最も優先する当たり前の姿勢が、米国ではむしろ珍しいのです。日本の野球文化が必要だと米球界が気付いた年になりそうです。後半でいま焦点の日米スター選手対比の例に触れます。  ユーチューブ7月17日付《【村上宗隆】加入後Wソックスが地区首位へ…ベナブル監督が本音「彼が変えたのは打線だけじゃない」121敗球団に起きた異変【海外の反応/MLB】》で常勝ロサンゼルス・ドジャースからホワイトソックスに2年前にトレードされ、意気消沈していた強打者、ミゲル・バルガス選手が村上選手の振る舞いを証言しています。

 《あいつは、このチームを一度も弱い球団として扱わなかったんだ。練習でも試合でも最初から優勝を狙うチームの選手みたいに振舞っていたよ。負けたら、ちゃんと腹を立てる。打てなかったら、次の日は誰よりも早く来て準備する。誰かが打ったら、自分の事みたいに喜ぶ。俺たちは勝ちたいと言っていいことを思い出した。勝つつもりで球場に来てよいと》

 足の故障で6週離脱する前にはリーグの本塁打トップ争いの20本を打ち、近年は離れていたシカゴのファンが熱狂していました。ローカルテレビ中継加入が18000世帯も増えました。ウィル・ベナブル監督はこう証言しています。

 《去年までなら、負けた翌日にクラブハウスから声が消えることもありました。今は負けた試合にも次の勝ち方の話が出る。監督が『信じろ』と言って、無理に作れる空気ではありません。このチームを村上が『勝つ集団』と呼んだのが大きい》

 「村上に会って人生が変わった」と話すチームメイトが多数です。

 ユーチューブ7月27日付《「日本人は私のことが嫌いなのかな」日本人選手たちの驚異的な活躍を目の当たりにしたパット・マーフィーが初めて明かした“本音”とは――大谷翔平、そして村上宗隆を見て気づいた“日本野球》で最優秀監督賞を2年連続で受賞している知将、ミルウォーキー・ブリュワーズのパット・マーフィー監督が日本人選手を称賛しています。

 《私が欲しいのは、彼らがクラブハウスに一歩入るだけで、チームがより良い方向は変わり始めるようなタイプの選手だ。監督がシーズン丸ごと、あるいは何年もかけて築こうとするものを、彼らはごく自然にそれを起こしてしまうことがある。大谷翔平を見て、単なる特別な例だと思っていた。スーパースターには特別な資質があっても不思議じゃないとね。だが、その後も山本由伸や、各地で成功している日本人選手を見続けた。さらに今は、村上宗隆のように、リーグ最弱と見られていたチームの姿を完全に変えつつある名前も出てきている。何世代にもわたって築かれてきた野球文化の成果を、私は目の当たりにしていると認めざるを得ない

 メジャーリーグで日本野球と真逆の振る舞いが話題になっています。大谷の10年7億ドル(約1121億円)を上回る15年総額7億6500万ドル(約1227億円)でニューヨーク・メッツに入団したフアン・ソト外野手についてです。メッツは29日現在45勝62敗でリーグ最下位に沈んでおり、チーム勝利優先でないプレーぶりがファンから非難されています。

 Full-Count6月8日付《大谷超え1227億円契約も…露呈した“決定的な違い” 怠慢プレーに米呆れ「これが最高額の選手ww」》がこう伝えています。

 《件のプレーは、メッツが2点をリードして迎えた3回2死三塁の好機だった。ソトはマイケル・キング投手のシンカーを引っかけ、平凡なニゴロに終わった。アウトを確信したのか、ソトはゆらりと一塁へ走り、とても全力疾走とは言えない状態だった。しかし、二塁のソン・ソンムン内野手がまさかのファンブル。さらにボールを後ろにそらしてしまった。ソトは相手のミスに途中で気づき、急に速度を上げたものの、惜しくも間に合わず。セーフであれば3点目が入っていただけに、痛恨と言わざるを得ないプレーだった》

 《怠慢走塁には厳しい声が殺到。「何億ドルももらっておいて、この怠慢か?」「すぐ交代させてベンチに下げるべきだったね」「1ドル分の全力プレーもなしか……」「あれだけのお金をもらっておいて、ゴロで全力疾走できないのか?」と非難が集中した》

 年俸総額1位627億円のドジャースは大谷が中心になってリーグ首位を独走しているのに、2位584億円のメッツはどん底の最下位です。高額年俸選手がそろっており、不振はソトだけの問題ではありません。メッツ内部の人間関係もチーム一丸どころか、ガタガタになっていると伝えられています。ソトは25日に左ふくらばぎの肉離れで10日間の負傷者リスト入りと発表され、離脱期間は4〜6週間とも見られています。

 【村上宗隆選手:注】日本では史上最年少の三冠王に輝いたが、米国への挑戦では必ずしも大きく期待されていなかった。ホワイトソックス球団は現状の物凄さに唖然としていると言ってよい。詳しい戦績・成績などは《スポーツナビ:村上 宗隆》で。なお、前回WBC準決勝で9回裏に逆転サヨナラ二塁打を放ち、二塁上で喜ぶ姿を、第675回「WBC準決勝で発揮されたYouTube素人報道力」で見られる。