中産階級の増大は中国を変えていくが……(20020218)

 2001年7月21日の「人民網日本語版」は「中国国家情報センターの当局者はこのほど、中国の『中産階級』消費者は向こう5年で2億人になるとの考えを明らかにした」と報じている。中産階級とは年収100万円くらい、日本ならざっと10倍、20倍して1000万、2000万円相当の暮らしぶりと考えたらいいようだ。衣食住の豊かさはもちろん、海外旅行もできる生活。人口12億人の多くが豊かさを目指して動き出し、現実に2億人もがその歩みの中にいて日々に行動している。それこそが中国経済の強さだ。高度成長期の日本を二つ、三つ束ねたかのよう。

 逆に既に豊かさの中にいて、それが崩れかかっていることに気づきながらも為す術がなく立ちつくしているのが日本人。ハングリーでなくなっている日本の子どもたちは、特別な夢を持たず、ぬるま湯に浸かっている親たちの生き方を、自分たちも踏襲出来ると安易に思いこんでいる。だから勉強する必要も感じない。

 年率7%の経済成長を持続する中国に、世界的に景気が低迷しがちな各国はとても追いつけない。その秘密について考えているのが、中日通ウェブサイトの「中国経済の持続的安定成長の『エンジン』は何か 」である。「市場経済に適応した経営メカニズムと創意工夫の精神をもつ民営企業は、中国の経済発展の活力に満ちた要素となっている」と述べ、立て役者は大規模な国有企業ではないとしている。創意に満ちた民営の中小企業こそエンジンなのだと推論している。

 いや、国有企業に大きな問題がある。日本総研の「中国三大改革は成功するか」(RIM 環太平洋ビジネス情報 2001年4月)で渡辺利夫氏はこう指摘している。

 「体制改革の起点1979年に工業総生産額の8割を占めていた国有企業のシェアは、近年3割を切るまでに縮小し、市場経済軌道を走る郷鎮企業、外資系企業、個人・私営企業など非国有企業群のシェアが拡大した」「国有企業が非国有企業との競合に破れ、その経営状態が深刻化したという事実に他ならない」

 「中国の財政収入は中央財政にせよ地方財政にせよ、いまなお国有企業の法人税に依存している。国有企業が経営不振に陥っている現状において、財政収入は滞り、財政支出はこれに見合って収縮せざるをえない。中国の財政支出の対GDP比が急減しているのはそのためである」「問題の起点は国有企業改革の遅れである。国有企業改革が進展しないがゆえに、国有企業の納税に依拠する 財政が萎縮し、またそれがゆえに、銀行は国有企業融資をふやさざるをえず、そうして不良債権の累増を招いた」(次項へ)


8.目次 9.次項