ソフト著作権問題もブレーキ

 今なら家庭のビデオデッキで番組を録画し、後で楽しむのは誰もがしていることだ。デジタルテレビは、その高画質・高音質のゆえに簡単にコピーを許す訳にいかない。コピーに劣化がなく、即、完全な商品になってしまう。既にこんな例が持ち上がっている。

 BSデジタルハイビジョン放送を始めた当初、WOWOWがハイビジョン録画が可能なD−VHSデッキでの高画質録画を認めていなかった。同社のお断り文書「D−VHS録画/再生について」によると「デジタル時代における視聴者の私的録画の権利保護と、著作権者の権利保護の両面から、ほとんどの放送番組に『1世代録画可』のコピー制御信号を付加して放送して」いるという。この結果、走査線が1080本もあるハイビジョン仕様から、テレビで標準画質の480本に自動的に落として録画されてしまう。BSデジタル各社の規制は普及優先から現在では緩やかだが、地上波全部となれば当然変わってくる。

 昨夏発売のNECパソコンにも同様な問題が隠されていた。「AV Watch」の「NEC、BSデジタルハイビジョン録画に対応した『VALUESTAR T』」を読むと、「ハイビジョンを録画した映像、およびハイビジョンのライブ映像は、すべてSTD表示(480p)となる」とあり、しかも「録画したハイビジョン映像は、本体内蔵のHDDからのみ再生できる」とまで制限が付く。急速に普及し始めたDVDメディアに保存はできても、再生にはハードディスクに一度読み出さねばならない。店頭予想価格50万円もする製品で、この不便さ。

 ビデオデッキやDVDレコーダーを使うにせよ、テレビ機能付きパソコンにせよ、家庭内なら自由に録画したり、加工できる現在の在りようと根本から様変わりする。事情が広く知れ渡れば「こんな厄介なものは要らないよ」という声があちこちから飛び出しそうなものだ。

 地上波デジタル化はUHF波を使うので、既存U波局との混信対策が必要になり、もう各地で始まってしまった。地上波デジタル化の一番の旗印は電波の有効利用だ。デジタル化で従来1局分に3局分の枠が生まれるが、当面は地方局でもハイビジョン放送で枠全部を使う。これは既存局の既得権を守った結果で、自由な新規参入とはほど遠い。また、VHF帯にあるテレビ、ラジオを追い出して空けてしまうが、現実には何に使うか決まっている訳ではない。

 「月刊ニューメディア3月号」の「総務省放送政策課長に聞く『地上波デジタル化、国はどう責任を果たすのか』」はインタビュー要約になっていて、多々ある問題点が一覧できる。

 その最後で「もし2011年までのデジタル移行が実現困難となったら」との質問に「現段階では想定していない。予定通りの完全移行を目指し、全力で取り組んでいく」「万一、不幸にも移行が実現困難となる事態が起これば『大胆かつ柔軟』に考える必要があるだろう」と答えている。

 一般大衆がメリットを感じにくく、家計も含め出費だけかさむ「国策」。一足早く始めた米国は、もともとケーブルテレビ視聴が多数派だったこともありデジタル化は行き詰まりつつある。「万一」が「十一」「五一」になったとしても不思議ではない。(了)

▼ご感想はメールで
7.前項 8.目次