ヒトゲノム解読がゴール間近 出遅れた日本,「機能解析」で巻き返せるか (20000518)

 人間の遺伝子情報(ゲノム)のうち99%を解読したと,米国のセレーラ社が4月初めに発表した。今後数週間かけて細かい仕上げに入り,夏までには解読を終える。高性能ロボットを何百台と並べた,米国におけるバイオ・ベンチャー企業の精力的な仕事ぶりは驚くほどである。

 5月初めには日独の研究グループが「ヒト21番染色体」の解読を完了したと報告。日米欧の公的機関によるヒトゲノム解読はこの6月までに9割分の概要版を公表し,2003年までに完全な解読を終わる計画だが,ベンチャーにはとても太刀打ちできない。

 公的機関による研究は成果を公開するが,ベンチャー企業は営利目的だから企業秘密として明かさないでおける。

 というのも,人間の遺伝子は10万個程度とみられており,解読によって遺伝子が生むタンパク質の構造を明かし,その機能を明確にできれば特許の対象になる。それを利用した医薬品や治療法にも及ぶとみられる。

 無限のフィールドでなら多少の立ち後れは取り返しもきくが,有限な数,それも10万程度しかないフィールドでの立ち後れは決定的なものになりかねない。


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