iモードは日本でしか成功しない?(20020524)

 携帯電話でインターネットと接続する「iモード」の欧州進出が始まったものの、日本での爆発的な普及とは遠い、寂しい出足という。秋には米国でも同じサービスがスタートするが、成功を確信する雰囲気はない。総務省の「インターネット接続サービスの利用者数等の推移」は3月末時点で、iモードを含む携帯電話端末による利用者数を5192万人としており、欧米とは際立った落差がある。なぜ日本でだけ成功するのか、欧米では見込みはないのか。いろいろな場所で言われてきた議論を振り返ると、重要な視点が抜け落ちていると気づいた。それは、我々の社会の特質を考える視点でもある。

 NTTドコモが現地の会社に出資あるいは提携してiモードを展開するのは、3月にまずドイツ、4月からオランダ、6月にベルギー、来春からはフランスも加わる。そのドイツは端末の値段が3万円もしていることもあり、先日の日経新聞の報道だと、まだ1万件余りの契約しか取れていない。日本では1999年2月にスタートし、半年で100万件、1年で400万件を超え、後は爆発的だった。現在はiモードだけで3200万件にのぼる。

 ZDNetの4月26日付特集「ドイツでiモードは売れていない?──『n21i』を現地調査」はドイツでサービス開始から20日後の時点で現地の反応をレポートしている。実機に触っての報告は国内のiモードとほぼ同じ感じだし、コンテンツについても十分な準備をしてスタートした様子も分かる。しかし、ベルリンの販売店員はこう話している。「iモードの反響はかなりあります。でもここで購入したという人はまだいません。来店される方も興味はあるようで,みなさんひととおり操作はしていくのですが,価格が高いからか買うまでには至らないようです」

 この3月、ドイツで開かれた世界最大のIT関連トレードショー「CeBIT(セビット) Hannover 2001」でも、ASCII24編集部の正田拓也さんが「取材を重ねるうちに、日本とヨーロッパのケータイがあまりに違うことに気づい」て「来場者にインタビュー、iモードケータイは欲しいか?」と尋ねている。

 「かけたお金に見合うだけ、便利なことが条件です。そうでなければ買いません」「ヨーロッパでは、こんなデータをやりとりする必要があるんでしょうか」「難しいというのが第一印象です。説明を受けてやっと使えました」と大人たちはシビアである。一方、16歳の高校生は「とても気に入りました」「日本人はいい“おもちゃ”を持っていると思うよ。こんなのが発売されたら買いたいね」と、日本の若者に近い反応を示した。

 iモード型の携帯電話について日本との落差をINTERNET WATCHの「後藤貴子の米国ハイテク事情」2000年12月11日付「米国にiモードライクな携帯が普及しない理由」はキーボード入力で出来ているパソコンと比べた、文化の面でこう指摘する。

 「キー数の少ない携帯には日本の五十音のように法則性があるほうが向いている。第一、小さなナンバーキーを親指で何度も押すなんて、普通の米国人にはイライラするだけかもしれない。また漢字に変換すれば、日本文は少ない文字数だけで意味が伝わる文を作りやすいが、英文だともっと文字数が必要になる。それに携帯の小さな画面では折り返しが多くなりすぎ、読みにくい」(次項へ)

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