【パンドラの箱を開けてしまった今】
では、欧米でiモード型携帯電話普及の可能性はゼロか。日本の現在が存在しなかったらイエスだ。しかし、その利便性を世界が知ってしまった以上、後戻りすることもない。「au携帯電話サービス『GPSケータイ』を利用した『HELPNETケータイ』、6月7日よりサービス開始〜緊急時に、自らの現在位置を把握し、通報〜」のようなサービスが月額315円から受けられるところまで来ている。高額な商品でも機能に納得ならお金を惜しまぬ日本の消費者相手だからこそ、短期間でここまで到達した。
デジタル・ディバイド層にはパソコンよりずっと向いている。この層から求められているデジタル・データはそんなに複雑なものではない。普及して安価になればどこの国でも、この事情は同じだから、日本と全く同じ爆発的な展開は無理としても、ケータイWatch「読者コーナー」の声は妥当だと思う。「フランスに住んでますが」「日本のケータイを持って帰り、写メールを見せびらかすと皆こぞって欲しがります。そういう意味では、ツボを得たマーケティングとサービスを展開すれば普及は充分可能と思います」「iモードに似てヨーロッパに適した別のサービスが出てくるのも時間の問題なような気がします」
ただ、私の連載第81回「ネットが変えつつある消費者行動」で考えたほどには、一般の人のiモード型携帯電話利用方法は進化していない。ビジネス面で電子クーポン、電子チラシのような存在があちこちに現れていても、消費行動まで変えてしまうほど劇的な変化を生んでいない。半額サービスの電子クーポン利用で、マーケティング巧者として知られるレンタルビデオチェーンが大きな反応を得て、ちょっと有名になっているくらい。
ひょっとすると市民運動のありようまで変えるとも思えたが、もともとデジタル・ディバイド組が多い悲しさか、JAVAで自由にプログラムが組めるようになって間もないせいか、草の根からあっと驚くアイデアが現れたとは聞かない。国内各地でも拡大する地域通貨との組み合わせなど、考えれば応用範囲は限りなくあるはずだが……。
英国の調査会社Ovum社の中期をにらんだレポートが「極めて不安定な情報通信市場、今こそ将来予測を見直すべし」で概説されている。その2006年にかけての予測はとても強含みである。
「NTTドコモのi-Modeサービスが大成功している日本では特にその勢いが強い。しかし、西欧も、2006年までにはアジア・太平洋地域の規模に匹敵するくらいまで成長する見込みである」「ブラウザを使ったワイヤレスサービスのビジネスモデルから生まれるワイアレスインターネットの世界全体収益は、2001年の318億ドルから2006年には2870億ドルを超える見込みである」
世界的には現在の日本に止まらない事態が予測されていると言えよう。日本のような異例な「好環境」にいるのだから、企業はもっとベンチャー精神を発揮して驚くようなビジネスモデルを開発しなければ嘘だ。それが出来ないとすれば、私が最近よく語っているソフトウエア開発に人材が育たない不毛に通じる病根が社会に広く存在することになろう。 (了)
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