国際熱核融合炉の誘致 本格見直しは今しかない(20010225)

 日本、欧州、ロシアが中心になって計画している国際熱核融合実験炉(ITER)の国内誘致を巡って、核融合研究者の意見分裂が表面化した。推進の原研に対して、大学の研究者は大半が反対か慎重論に傾いているという。立候補の期限をこの夏に控えて、原子力委員会の下にある「ITER計画懇談会」は1月末に正式決定をするはずが、繰り延べになっている。この対立を専門家内部の「コップの中の嵐」と見てはならない。巨大とも言える問題点が隠されたこのプロジェクトの国内誘致には、国民的な合意が必要なのではないか。見直すなら今しかない。

 廃棄物だらけの核分裂炉に比べて、核融合はクリーンだとのイメージを持たれている。エネルギーを担う「中性子線」が持つ言葉のイメージもそうだった。しかし、99年の東海村臨界事故で中性子線がどんなものなのか、広く国民に知れ渡った。あれほどわずかな量で死者を出し、周辺では家庭内の様々な物を放射化してしまった。

 核融合実験と言えば、原研にある小山のような巨大装置「JT−60」が有名である。しかし、従来の核融合実験装置はわずかの例外を除いて、実際には核融合を起こしていない。従って、それによる中性子線の発生もなく、いわば「核融合おままごと」に止まっていた。国際熱核融合炉が目指しているのは、本当の核融合プラズマを造って燃やすことだ。当然、臨界事故など耳垢程度、比較にならぬ膨大な中性子線が発生する。 (次項へ)


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