本人が会社に申告していた残業時間は平日平均で「2.41時間」しかなかったが,実際には5日に2日の割合で午前2時以降に退社していた。二審の東京高裁は,こうした残業の過少申告や両親が様子に気付いていたことを取り上げて過失相殺されるとしたが,最高裁は高裁判決を破棄した。最高裁判決は労働者の性格が通常想定される範囲にある限り,企業はそれを考えて使いこなすべきだとする。

 戦後成長期の働き過ぎとも言えた世代と,最近の若い世代は違っているはずだが,過労死事件は起きている。私の連載コラム第29回「過労死と働くことの意味」は社会心理学者の調査や国民生活白書などをもとに,若い世代にも新たな勤労意欲があり,経済的な動機というよりも,内面的な動機付けから過労死に至るまで働いてしまうことを描き出している。

 管理職の教育など,心の健康対策で大半の企業は遅れていると言わざるを得ない。気になる方は「心療内科のケースに学ぶ・健康特集『心』が招く『からだ』の病気」でセルフチェックされることを勧める。(了)

◆関係コラム
第29回「過労死と働くことの意味」
第82回「過労自殺判決と新たな裁量労働制」


7.前項 8.目次