存在証明は社会の在りように響く
ヒットした映画「マイノリティ・レポート」の未来都市では、網膜パターンによる識別装置が街中にあって、逃げる主人公はどこに行こうと通過点を把握されることになる。現実がそこまで進むには時間がかかるとも思ったが、ケータイに仕掛ければ存在証明にもっと様々な変形が現れそうだ。ただ、今直ぐというならアリバイの証明にはGPS機能を使えばいい。例えばauのGPS携帯電話同士なら持っている相手の位置を割り出してくれる。GPS携帯についてはネプロジャパン社のモバイルレポートが調査して、現在の使用頻度は少なくとも関心が高まっているとしている。
私が関心を持ったのはもっと間接的なものだ。これがなかなかに興味深い。一つ目は象印マホービンの「みまもりほっとライン」である。高齢者がポットを使った時間を記録して、遠く離れた家族に一日2度のメールで届ける。定期的に食事をしているか、などが読みとれる。もちろん、ポットが使われなくなったら一大事となる。
二つ目は今年2月から始まるITmediaの「メールでこどもの登下校を通知。DNPなどが無線タグを利用したサービスを開始」である。「こどもにカードタイプやバックなどにぶら下げる無線タグを配布。こどもが、塾の教室や学校の出入り口に設置されたリーダに無線タグをかざすことで、登下校時刻を保護者にメールで通知する」。連れ去り事件がこんなにも起きると、親にとって塾に行ったかを気にする以外にも役に立とう。
asahi.com 関西の「子どもの危険、父母に配信 携帯メールで不審者情報」に現れているように、門真や枚方、あるいは関東でも既にPTAや学校がいくつも連合して不審者情報を集め、自ら配信、自衛している。
いずれもケータイはメールを受けるだけの役目だが、ケータイ側にも無線タグの機能が搭載される計画がある。「FeliCa搭載で携帯はこうなる」は今年夏以降について言う。「FeliCaはソニーが開発した非接触ICチップのひとつ。JR東日本の『Suica』やビットワレットの『Edy』に使われていることで有名だ。簡単にいえば、携帯電話がSuicaやEdyの代わりに使えるようになる」
定期券や財布代わりになり、買った商品などの記録が自動的に残るくらいまでは、単純に便利とするべきか。しかし、もっと進めば、自分の行動記録が自動的に残ると同時に、もし第三者が何かを仕掛ければ見られてしまう――大いに迷惑と感じるか、何かに使えると考えるか。
誰かの存在証明については、ケータイはもっと単純なやり方でも力を持つかも知れない。つい最近、ケータイで撮った写真をメールで送信するだけで、ネット上の自分のページにどんどんアップされるシステムを備えた「moblog」があると知った。流行のBlog(ブログ)をケータイ向けに簡便に実現しており、ブログ絵日記版ともいえる。気になるものを撮影したらメールで送る――長々とした文章を書くのはケータイの生理に合わない――デジカメ付きケータイの本領はこの形でより発揮されようだ。まだ、利用者はそれほど多くはないようだが、広まる可能性は大とみた。
街中でみんなで撮影しまくって、即座にミニ・ホームページに写真が掲示されていく。思わぬ人に写されて、思わぬページに自分の姿が垣間見えるなんてことも起きるかも知れない。撮影者自身のアリバイ証明にもなる。上述した見守りポットや登下校無線タグといい、今直ぐでもミステリー小説のネタになりそうである。意図するかどうかは別として、個人の行動がケータイを媒介にして可視化される・監視される・証明される……。ケータイ高密度普及に、やや不気味な明日が見えていると感じる。(了)
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