メールマガジン全盛期は終わった(20040610)

 日本独特のインターネット文化として、海外に例を見ない発達ぶりだったメールマガジンに深い陰(かげ)りが差している。「その時代は終わった」とまでは言わないが、全盛期から転げ落ちていることは、次節の集計表を見ていただけば一目瞭然である。メルマガを創始し、今も月間2億部を配る代表的なメルマガ発行スタンド「まぐまぐ」の5月第1週上位20誌の発行部数を、2ヶ月前と比べてみた。

 新規参入読者の枯渇が原因

 この集計には「メールマガジン発行部数ランキング」が各誌別に保存しているデータを使わせていただいた。1位の発行部数は5月初に192,232、3月初に201,419と、95.4%に減っている。以下、順位とジャンルと前後比を同様に並べる。

【主要メルマガの発行部数推移】
順位 ジャンル 前後比
1お得情報 95.4%
2アダルト 93.2%
3ダイエット92.9%
4心理学 105.3%
5株情報 102.5%
6ウェブ情報 100.4%
7英字新聞101.4%
8英字新聞97.6%
9ウェブ情報 96.9%
10芸能界 95.8%
11懸賞情報 97.4%
12転職情報111.3%
13メル友 95.7%
14車情報 90.6%
15パソコン 93.8%
16英会話 99.2%
17アダルト 93.8%
18経営戦略 99.0%
19競馬情報 96.2%
20プレゼント117.3%

 少し前までは軒並み増加が当たり前だった。今では増えている雑誌は例外的で、2ヶ月間で発行部数は平均2%落ちている。これが春先の異変ではなく、雑誌によって減り始め時期はばらつくものの、もう1年ないし1年半も前から続いている現象なのだ。

 しかし、大部数のメルマガに限った現象ではないのか。部数や創刊時期による差はないのか。そこで最も古い97、98年ごろ創刊のグループと2年前の2002年創刊で元気がいいはずのグループで、上位から10誌とばしで同じ集計をしたら、古いメルマガや比較的新しくても大きな部数を獲得したものは明らかに衰退過程に入っている。これは硬派ものも軟派ものも同じだ。いや、実用情報や軟派ものの方が減少傾向は強く、中身のある硬派ものマガジンは、むしろゆっくりと落ちている。

 減少原因ははっきりしていて、メルマガ購読に新規に参入する読者がほぼ枯渇したことにある。「まぐまぐデータ・ウィークリーまぐまぐ(その2)」に、「まぐまぐ」が読者向けに発行しているウィークリー誌の発行部数の推移が表示されている。新規にまぐまぐスタンドを利用してもウィークリー誌を取らない人もいるものの、「総合版」の部数が読者数の動きをほぼ反映している。順調に伸びていたのに、2003年初めで頭打ちになり、以後440万部前後でほとんど変わらぬ状態が続いている。

 メルマガの読者は、気に入ってずっと固定読者になる層と、一定期間読んで止めていく層に分かれる。連載第100回「ネット・ジャーナリズム確立の時」で2001年に「私のマガジンを例に取ると、年間で1万数千人が新しく購読を始め、数千人がやめていく。読者2万人前後のマガジンでは、似たような状態らしい」と書いた。やめていく数に見合った新規読者が生まれて、そのメルマガの部数は横這いになる。現状はやめていく数に新規が全く追いついていない。

 新規読者はどうして枯渇しまったのか。平成15年「通信利用動向調査」にある「世代別のインターネット利用率の推移」を見れば事態が理解しやすい。世代別利用率は10、20、30代でもう90%に達し、40代も84%である。ここからは新たな利用者は出なくなっている。残る未開拓層はデジタル・ディバイド傾向が強い50代以上でしかない。 (次項[電子メールを取りまく逆風と……]へ続く)


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