みずほシステム統合に欠けた最低限の常識(20020505)

 みずほ銀行などの発足に伴う大規模システム障害は収拾されそうに見えて、また新たな混乱を露呈する展開が続く。富士銀、第一勧銀、興銀の3行合併、再編で別々のシステムを持っていて抜本的統合が出来ず、当面は各システム間をつなぐ中継システムを新設して対処した結果だ。

 欧米の金融機関のように金融工学を駆使し業績をあげることは苦手でも、日常の業務はこつこつと几帳面に、間違いなく果たす。それが日本の金融機関が持つ最大の美点のはずだった。しかし、几帳面に果たせばよいのは平常時の話で、新しいシステムを構築する段階では決断の連続になる。

 「みずほのトラブルを巡るコンピュータメーカーの思惑」で中上真吾氏は今回の経緯についてこう説明している。

 「99年8月の統合発表以来、各行間のコンピュータシステムの統合は、最大の課題となっていた。もともと富士銀行はIBM、日本興業銀行は日立製作所、第一勧業銀行は富士通というように、まったく異なるメーカーの基幹システムが導入されていただけに、統合にかかわる手間と労力は大変なものが強いられたのは容易に想像できる」

 「3行の既存システムを中継コンピュータで接続し、1年後に、第一勧業銀行が導入していた富士通の基幹システムをベースに、3行のシステム統合を図るという仕組みが採用された。だが、中継コンピュータにプログラムミスによるシステム障害が発生」「銀行間の情報システム部門同士の連携不足、そしてメーカー間の連携不足は否めない」

 非常に困難な作業が予想されて、それが予想通りだっただけなのだろうか。

 MSNマネーの「みずほ銀行のシステムトラブルから学ぶこと」で外資系金融コンサルタントの円城寺真哉氏はこう指摘する。「この問題の背景には旧銀行間のいわゆる主導権争いがありました。それは裏を返せば、リーダー・シップ不在の合併であったということに他なりません」

 さらに、システムのあり方そのものについての考え方も甘い。

 「外銀の場合、自分達のやりたいことやノウハウがまずあって、それを効率よく実現してくれる“道具”としてシステムを捉えているのに対し、邦銀の場合はシステムを、投資さえしておけば何かしら自然と便利にしてくれる“魔法の箱”のように捉えているように感じられる」

 違うやり方をしていた三つの銀行を統合するには、取りあえずの中継システム設置だけではなく、顧客とのやり取りの仕方など事細かな仕様をどんどん統一して行かねばならない。

 「合併によるシステム統合作業にはこういった細かい“決め事”がたくさんあって、その1つ1つを迅速且つトップダウン的に決断・解決していかなければならないということを、経営自身がしっかり認識し実行していかないと、あのような大トラブルをまねいてしまうのです」(次項へ)


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