今回の内実はやはり経営陣が判断をせず、システム作りの現場に丸投げしていたと思わせるデータを、「think or die」の「愛と苦悩の日記 2002/4/19」で見つけた。
「みずほファイナンシャルグループのシステム障害、僕が所属している企業でも会計システムの入出金部分に大きな影響が出たようだ。いちばんバカらしいと思ったのは入出金明細に相手の会社名が記載されなくなったため、債権債務の自動消し込みが不可能になったこと。みずほに問い合わせたところ『新システムの仕様です』という客を客とも思わないような回答があったらしい」
すべての顧客に対して従来サービスの仕様を引き継ぐのが、銀行が合併をした場合で最低限のルールではないか。これは驚くべき怠慢である。システム担当の役員はこんな常識的な指示さえしなかったと思われる。
ここではさらに、障害発生の遠因に情報を扱うシステムエンジニアの慢性的な不足があると指摘されている。
「とくにここ数年、銀行の大型合併が集中したため十分な人員が手当てできなかったようだ。現代社会の根幹となるコンピュータの技術者不足はいわば国家的な問題。情報技術者の育成には一定の知的水準をもつ若者を数年かけて教育する必要があり、専門性が高いため他職種からの転換が難しい」「企業経営者や経済団体が情報技術者の育成について、いかにいい加減な考えしか持っていないかの証拠である」
ソフトウエア開発に人材なしと書いた前回「半導体技術に頂点が見えた今」をリリースした後、民間企業でソフトウエア開発をしている読者からこんなメールをいただいている。
「教育システムに間違いがある以前に、そもそもソフトウェアを開発する人なんてのは、会社員の中のひとつの事務手続きの一形態に過ぎないとしか思われていないのではないか、と思います」
「印鑑の押しかた(キーボードの押し方)が分かればいいのです。論理的にイメージを構成してそのとおりにシステムを構築するなんて、どうせ給料高くないし大したことはない――ってことに日本社会はなってるのではないかな、と思います。なにせソフトウェア開発をやっても、なんのインセンティブもありませんし。税金取られるだけ。体壊すだけ」
この読者は「教育システム変えるには、日本自体の、そのような仕組み全体変えることが必要だと思います。教育だけ変えるのは無理なのでは」とも言っている。日亜化学で青色発光ダイオードを開発した中村修二氏の処遇がわずか2万円の報奨金だったことが端的に示すように、日本の企業社会では創造的な仕事をしていることに、ふさわしい敬意も報酬も与えられない。いや、何が創造的なのかすら理解されていない。
企業経営にとって何が大事か分かっていない「みずほ」の例を知れば、不思議とするに当たらないだろう。長い右肩上がりの時代に前例マニュアル集だけ繰って過ごしてきた人が、幹部としていかに多数を占めることか。(了)
▼ご感想はメールで