手続きの公正さ、技術レベルへ疑念

 各種の安全審査なり、定検での監督なりが、従来から国が言っているほど、きちんと行われていたのだろうか。最近の東電不正事件まで、繰り返される事故や不祥事の中で、疑念が深まっている。

 その典型を死者まで出したJCO臨界事故に見る。京大原子炉実験所で行われている原子力安全問題ゼミ第89回で、藤野聡さんが「もうひとつの連鎖反応−臨界事故への歯車はいかに回転したか」と題して講演した。

 「転換試験棟の安全審査に問題があったことは知られていたが、JCO 刑事裁判の過程で、動力炉・核燃料開発事業団からの出向者が転換試験棟の安全審査の事務局をつとめ、のちに事故の原因となる要素を作り上げていたことが判明した。最終的に事故に至る『ボタンの掛け違え』はここに大きく端を発している」と問題提起している。

 臨界事故を振り返れば、あのような高濃度のウラン溶液を扱う施設に臨界が起こせる形状の容器を設置したことが最大の誤りである。臨界が起きえない、形状管理さえしていれば事故は存在しなかった。が、JCOへの発注者である動燃から当時の科学技術庁へ出向した人物が、事故があった転換試験棟をJCO側が意図した以上の「加工事業許可」まで取得するように勧め、手短に済ませるために安全審査にも手抜きがあった可能性が示されている。動燃の将来の発注内容に対応できさえすれば、臨界防止の基本原則さえ顧みなかったのではないか。

 第9回「2つの動燃事故に見る目標喪失」で、折れてナトリウムが漏れた温度計さや管の設計不備を書いて以来、原子力安全行政について過去の取材経験で持った以上の、様々なチャンネルから情報をいただいた。監督する旧・科学技術庁にも「人」はおらず、借りてくる「専門家」もいい加減――情報の方向はそう示している。

 「米国機械学会の基準は滑らかな形状をした管について作られていたのに、もんじゅのさや管は太い管の先に細い管を付けた段付き構造だった。こういった不連続な構造が要注意なのは、大学で材料力学を学んだ学生なら誰でも知っている。しかし、動燃の担当者は設計に異を唱えなかった」

 この、技術的にあり得ないことが起きる旧・動燃の技術レベルの危うさを、動燃内部にいる読者からの情報で理解できるようになった。

 「こんな物が欲しいな、出来たらいいな、というとき、人は意識するしないに関わらず▼概念設計▼基本設計▼詳細設計▼製作(施工)設計――を行います」「ふつーの技術屋がいる民間会社などは試作品などを除き、設計を自分の物とした上で発注します。では、サイクル機構はどうか?政府の研究機関であり技術屋もいっぱいいる。で、実態は・・・概念設計から外部に委託します」

 「『こんなものまで委託に出して,うち(サイクル機構)は何を研究するんだ!!』と怒った某プロパーのエライ人。知らなかったの?普通の人が見たら驚くようなものまで委託に出してます。完全な手抜き。解りやすく言うと、宿題を金払って他人にやってもらうようなもの」

 「さらに驚きなのが多くの契約は”詳細設計込みで製作の契約”がなされること」

 核燃料サイクル開発機構の一般仕様書には、こう記載があるという。

 「▼○○に適用すべき関係法令を示しているが、受注者は自己の責任において全ての内容を検討し遺漏の無いようにすること。▼受注者はすべての資料を詳細に検討し、技術上および書類上の矛盾、誤り、不明瞭、欠陥等があった場合は直ちに機構に通知し、承認を得て訂正すること。▼受注者は,受注者の責任において技術的または経済的理由より機構に設計の変更を申し出ることが出来る。この場合、事前に書面にて理由、検討結果等の資料を添えて機構の承認を得ること。ただし、承認後といえどもすべての責任は受注者にあるものとする」

 「何回読んでも丸投げにしか取れないんですけど(笑)」「折れた段付さや管の温度計設計に異を示さなかった、または、示せなかったのが解るような」と評している「読者」は、ある幹部職員と、以下のやりとりをしたそうだ。

 「ちゃんと設計した上で、発注すべきだ!」

 「そんな設計できない。」

 「ならば,外部に出して設計し詳細設計を機構の所有として、あらためて発注できるでしょ!」

 「機構の設計としてもし何か有った場合、責任が持てないからダメだ!!」

 今回の判決を受けて、安全審査の関係者から「我々は膨大な計算をして確認しているのに」と、残念がる声があがった。枝葉末節まで他人におんぶする旧・動燃に比べれば一見、真っ当な反応だが、安全審査に本当に期待されているのは計算ではなく、その申請内容で、例えば起き得る事故事象を尽くしているのか、見落としはないのか担保してくれる「目」なのだ。逆に、計算など委託に出していただいて結構。安全審査をする側も受ける側も、自分のするべきことを随分、間違えていると申し上げたい。(了)

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