ナノテクノロジーは新産業たるか(20010909)

 7月の完全失業率が過去最悪の5%台に乗った。政府の「改革」はなかなか立ち上がらず、現在のところ「体質改善」の先頭に立っているのは企業であり、東芝、日立製作所などから2万人規模の人員削減が打ち出された。こうした動きは大手の企業だけ集めても数十万人規模の削減になる。「改革」が進めばさらに多数の「人余り」が現実のものになる。雇用を満たす新産業を渇望する声が強く、遠い先の技術と思われたナノテクノロジーにまで期待が掛かりだしている。千分の1の「ミリ」、百万分の1の「マイクロ」に対して、「ナノ」とは十億分の1を表し、10ナノメートル、つまり1億分の1メートル前後にいまスポットが当たっている。

 経団連が3月に出した意見書「ナノテクが創る未来社会<n-Plan21>」は、5〜10年後の実現を目指す「フラグシップ型の研究開発テーマ」と10〜20年後を目指す「チャレンジ型の研究開発テーマ」を分けて設定し、特に前者では日本が欧米に比べて強みを持つ分野に重点投資するよう求めている。挙げられている項目は「次世代半導体技術」「テラビット級情報ストレージ技術」「ネットワークデバイス技術」の三つである。

 少し先の後者としては「ナノプロセス・マテリアル」「バイオナノシステム」「ナノデバイス」「ナノ計測」「ナノ加工」「ナノシミュレーション」の6テーマを掲げている。

 半導体は最小線幅が現在は180ナノメートルなのに、2010年頃には50ナノ メートルにまで下がると見込まれる。その国際競争に遅れないことが第一です よと、性急に今直ぐにでも結果が欲しい思いが透けて見える。

 これだけではまずいと感じているのか、一方で、「総合科学技術会議におい て、ナノテクノロジーに現在、どの程度の予算が投入されているかを明らかに するとともに、目指すべき予算の総額のガイドラインの設定(例えば、科学技 術関係経費の5%)をはじめ、重点投資分野やその研究体制の明示などナノテ クノロジーの推進戦略を策定することが期待される」と述べ、「国として一元 的にナノテクノロジーを推進すべき」とする。

 そんなことが出来る組織だったかいと、私は問いたくなる。

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