こうなると米国のクリントン前大統領が2000年1月に出した「ナショナル・ナノテクノロジー・イニシアティブ(NNI)」を思い起こさずにいられない。三菱総研「Technology Today」の「ナノテクブームについて」はこれとの比較で、ブームの現状に警鐘を鳴らす。

 「クリントンのNNI文書では、『ナノテク』を物質をナノレベルで操作したり移動させたりする技術と規定し、長期的で基礎的なナノ科学とナノ工学であることを明示していた」「『長期的な研究への取り組みが必要な基礎的な科学分野・工学分野であること』がその基本に据えられている」「ブーム先行で期待だけが高まってしまうと、すぐには実用化という成果が出せないだけに、ブームが失望に変化し、却って当該分野の長期的で継続的な推進を阻害するようにならないか心配である」

 NNI文書は単なる指針ではない。前年より83%も多い5億ドルを研究プロジェクトに投じるとする、大型予算付き「米国ナノテクノロジー計画」なのだ。文部科学省が来年度予算概算要求を示したので、比較してみたい。

《科学技術予算の来年度分野別概算要求額》
(金額:億円)
研究分野
要求 伸び率 占有率
生命科学
910 62.4% 10.5%
ナノテク・材料
318 49.3% 3.7%
地震・防災対策
284 43.4% 3.3%
環境
651 13.9% 7.5%
情報通信
957 12.1% 11.0%
航空・宇宙
1928 -2.9% 22.2%
海洋
362 -6.2% 4.2%
原子力
3257 -6.4% 37.6%
☆合計
8671 5.1% 100%

 「ナノテク・材料」という括り方自体が気に入らないし、ナノテクの本質を分かっているのか不安になる。それは置くとしても、NNI文書が昨年はじめに出されたものであることを考えると、気合の入り方の差は歴然としている。

 研究の評価することがもともと出来ず、学者の大合唱に弱い官僚任せにして大きく舵を切ることなど、そうそう出来ないことを、この一覧表は示していると思う。総合科学技術会議の構成を考えたら、過大な期待はできない。

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