読者がわざわざ見に行かねばならないホームページで多くの人に読んでもらおうとすれば限度がある。しかし、ネット・ジャーナリズムは日本独自で発展したメールマガジンを主な媒体にする。
メールマガジンは深水英一郎氏が97年初め、個人で開設した配信システム「まぐまぐ」に始まる。企業が大量のメールを配信するシステムは存在したが、新しいシステムは、個人の編集長と個人の読者を相手にした。誰でも登録すれば無料で数百通でも数万通でも、思うときに送り出せる。最大手「まぐまぐ」が、新規マガジンの情報を利用者に届ける週刊誌は、発行部数が330万を数え、広告収入で配信システムは維持されている。同様の他システムを併せ、マガジンの種類は数万種、利用読者の実数は500万人以上に達しよう。「まぐまぐ」だけで延べ読者数は2600万人を超える。
膨大な数のメールマガジンの中で、ジャーナリズムと言える存在は少ない。読者側も気軽な気持ちで付き合っている人が圧倒的だろう。それでも健康や環境、暮らしなどのミニ知識、教育、教養関係の話題、官庁情報や経済・ビジネス情報まで広げると、有用なマガジンは数多いことに気付く。
読者側から見て気軽であることから、この国で乏しかったメディアリテラシー(メディア読み書き能力)育成の好実践場にもなる。私のマガジンを例に取ると、年間で1万数千人が新しく購読を始め、数千人がやめていく。読者2万人前後のマガジンでは、似たような状態らしい。日々の配達を頼んでいる新聞を取り替えるには決断と手間が必要だが、メールマガジンは購読も停止も極めて簡単。漫然と同じ新聞・テレビを利用し続ける日常とは違う世界が存在し、やがては本物のメディア鑑定力へと進化する可能性を秘めていると思う。 (了)
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