そして、VRの課題は「複合現実感」(Mixed Reality=MR)へと進んだ。現実世界と仮想世界を融合し、現実世界の中にいながら、そこに仮想の物体や人物を登場させ、現実の人と交渉を持たせる。映画でしょっちゅう見る合成ではないか、と思わないで欲しい。

 「いま映像製作業界ではSFX技術としての実写とCGの合成が花盛りである。この場合は,時間をかけて1コマ1コマ手作業で仕上げても構わない。その職人芸こそが腕の見せどころとなっている」

 「MR技術の場合,現実空間と仮想空間の整合は実時間処理であり,かつ融合された複合現実環境とのインタラクションが前提となっている。これはVRから継承してきた条件である。受身で見る映画とは違い,その場で体験できなくてはならない。その上,単なるVR以上のものが求められている」

 VR研究は、この技術を応用して遠隔地での医療行為ができないか、高放射能汚染下など極限状態に置いた作業ロボットの操縦を可能にしたい――そんな現実との関わりが進む中で、単にコンピューター内部に仮想空間を創造することから、現実世界と交流するように鍛えられていったのである。

 どんなことを試みているのか、具体例を紹介した方が直感的でよかろう。若い人たちの仕事を見よう。「学生対抗手作りバーチャルリアリティコンテスト」が毎年開かれるようになった。その第8回「IVRC 2000」の最終審査で東大工学部ARIELチームが優勝した。テーマは「バーチャルチャンバラ」であり、この報告書は細部まで分かって面白い。

 簡単にというのなら「講評」で間に合わせよう。「HMDを被って古代アリーナに没入し、フライホイールを用いた撃力提示装置つきのデバイスで、AI搭載・ワンスキンアニメーション3DCGの怪人と戦うという作品である」。怪人の姿は本来は戦っている人にしか見えていないが、スクリーンに合成して見物の観衆にも見せている。

 準優勝した奈良先端科学技術大学院大学・戦國チームは、騎馬武者が互いに並走しながら矢を射て戦う。

 テーマパークで次に現れるのは、現在のように観客全体をひとくくりにしないで、仮想生物・物体とのもっと進んだ個性的な「交渉」であろう。家庭のビデオ・ゲーム機やゲームセンターでは味わえないものを作り出すポテンシャルは、MRの世界にすでに蓄えられつつあるとみた。 (了)

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