新型肺炎SARSをウオッチする(20030423)

 世界保健機関(WHO)が3月12日に「ハノイ・香港等における病院内での原因不明の重症呼吸器疾患の集団発生」の緊急情報を発表、4月2日に香港・広東省への渡航延期勧告をして3週間なのに、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)は、世界規模の広がりを見せている。新型のコロナウイルスが原因と異例の早さで確認されたものの、ワクチンはもちろん出来ていないし、治療法も手探り状態。国内への本格的な上陸も不可避と考えた方がよい。今のうちにネット上で得られる情報源を整え、頭の中を整理しておきたい。衛生から経済へ影響が広がり、海外からの来訪者が半減したシンガポール政府は「1000億円を超す被害」と言い出している。

 どんな病気か・集団発生と感染経路

 政府の感染症情報センター「SARSの累積『可能性例』報告数」によれば、19日現在、世界27カ国で症例数3547、死者182人、回復者1749人である。死亡率は5%程度だが、高齢者では3割にもなり、死に至らないまでも人工呼吸器が長期間、外せなくなったケースが相当数ある。

 患者と疑うべき条件として当初に挙げられたのは、2002年11月以降の発生に加え、38度以上の急な発熱▼乾いた咳や呼吸困難などの呼吸器症状▼発症前10日以内に中国など汚染地域に旅行したか、患者と接触した――の3項目がそろうこと。しかし、潜伏期間がだんだん長くなり、最近では16日間もあるとの情報が流れていて流動的。症状面でも、香港の集団発生では下痢を伴うケースが多数を占めた。ウイルスの変異も懸念される。

 確定診断するためにはウイルスを検出するのが一番である。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を使って、原因ウイルスの特徴的な遺伝子断片を試験管内で大量増幅して検出する。現段階ではまだ完全でなく、見落としなど否定しきれないものの急速に改良されていて、後で取り上げる原因ウイルス早期確定と並ぶ「バイオの世紀」らしいトピックだ。

 相当に濃厚な接触をしないと感染しない類の病気と思われたのに、香港の高層マンション群「淘大花園(アモイガーデン)」(19棟)で起きた集団感染は専門家に強いショックを与えた。空気感染するのか、一時は騒然とした。17日になって「SARS院内感染の病院に通院していた男性の下水汚物が感染源。トイレ汚水管とつながる排水管から水蒸気に付着したウイルスが各部屋の浴室に広がり、浴室換気扇が拡散を助長」との見解が衛生当局から出された。排水管を共有する上下階に患者が集中していた。

 この見方が真実とすれば排水管途中にあるU字パイプなどに常時、水がたまる状態になっていれば感染拡大は防げる。もともと汚臭や虫の侵入を防ぐ仕組みとして作られている。浴室以外にも排水途中に水がたまる構造はあちこちにある。マンションの洗濯機置き場では、洗濯を4、5日しないでおくと水が蒸発して効果が無くなると言われたりするから身近な現象なのだ。各国で香港の事態が再現する恐れは多分にある。

 カナダでの集団発生は、カルト的な宗教団体による3月末の大きな集会が感染の機会になった可能性が高い。

 感染が主につばなどの飛沫によるものとなれば、マスク着用が役に立つ。ネット上にあるマスク専門ホームページの「ディスポーザブルマスク」によると、微粒子捕集に優れたN95マスクは既に入手困難。もっとも、このマスクはどこの紹介でも息苦しくて長時間の使用には不向きとされている。これに代わって長時間使用可能なのが防じんマスク。原発事故でも発生したかのようで異様な感じがする。患者に会いに行ったりするのでなければ、ある程度の捕集性能は保証されるサージカルマスク(外科用マスク)が1枚数十円で手軽。が、これも品切れと書かれている銘柄があちこちあって驚く。(次項「困難な治療・抗ウイルス薬に副作用」「人獣共通感染症の闇・そして中国の汚染は」へ)


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8.目次 9.次項