松浦祥次郎・原子力安全委員長は10月4日付の電気新聞で、梶田課長よりはるかに真っ当な指摘をしている。「自浄能力がなければ原子力はやめるべきだ。また、愚直に徹することができなければ、同じくやめるべきだ。やめた場合、電力供給は混乱するだろう。その責任が原子力関係者にあるとことも自覚しなければならない」と。
今回の経緯をうけ安全委員会は小泉首相に対して再発防止の勧告をすることになり、原子力安全・保安院の検査能力増強が盛り込まれるという。しかし、米国原子力規制委員会(NRC)のような強力スタッフを持つことが最善であるとしても、そんな人材が国内のどこにいるのだ。問題意識を持って原発を見ることを怠ってきた国内の体制側は、決定的に人材を欠いている。
総合資源エネルギー調査会が昨年7月に出した報告「今後のエネルギー政策について」に「原子力発電所を今後増設しないケースの概要」がある。京都議定書批准による二酸化炭素排出削減の国際的な約束を、想定されている原発3割増設無しで守るとしたらどうなるのか。
「2010年度において製造業の生産額が基準ケースに比して約19兆円と大幅に下落し」「エネルギー多消費産業においては、エネルギー消費に伴う負担増が、大きいものでは総生産額の3%程度にもなり、利益を上回るような水準となる可能性あり」「経済成長率は、2008年度〜2010年度はほぼゼロ成長」
成長に必要なエネルギーが供給されないために、ほぼゼロ成長の時代が来るそうだ。このシナリオはある方向の想定を重ねて得られたものだから、そのまま鵜呑みにする必要はない。エネルギー多消費産業を国外に出すなど産業構造を変えることも出来るだろうし、経済はそう動くだろう。省エネ技術の進展でも変わるし、風力など新エネルギーにも考えられている以上の可能性がある。
残り時間が少ない2002年の段階に至って一部の人たちが、密室にこもって考えたシナリオしか存在しないのが問題である。前提条件や様々な根拠データをオープンにして、国民的な議論にする必要がある。総合資源エネルギー調査会報告には拙速な取りまとめに対する反対意見も添付されており、その言い分は極めて正当だと思う。 (了)
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