こうした中で5月に総理府が実施した「臓器移植に関する世論調査」は示唆に富んだ結果を出している。意思表示カードの所持率は2年前調査の2.6%から9.4%に上昇している一方で,「持ちたくない」と思う人の割合が38.9 %から42.3%へと上がっている。
医療への不信は解消されるどころか,深まっていると思う。本当に移植医療を定着させようとしたいならば,もう一度,原点からやり直した方がよい。「脳死は人の死だ」と言い放つ傲慢な態度は不信を募らせるだけである。
医学界の側が腰を低くして「脳死と判定しても,完全な死ではないかもしれません。ひょっとしたら何かの意識は残っているかも知れません。現在の科学では分からないことです。しかし,この段階から蘇生することは考えられません。ここはひとつ,病気で困っている方のために臓器提供を考えてみていただけませんか」と持ち出す姿勢であれば,欧米の移植現場に比べて非常に不自由になっている法律の枠組みも変えられるはずだ。