先行き不透明な再処理・廃棄物管理
私が科学部員になって原子力取材に取り組んでから20年を超える。最初の取材テーマがこのバックエンド問題だった私の常識からすると、全部で19兆円弱で済むとの、この見積もりは危うい。
廃棄物関係は最も怖い高レベル廃棄物を含めてどれも費用は確定的でない。また再処理の副産物として多量に現れる、長寿命アルファ核種の超ウラン元素(TRU)を含んでいるTRU廃棄物は、超長期にわたって人間から遠ざける必要がある。少し通じている者の常識として、TRU廃棄物処理の枠組みはおぼろげに見えてきた段階にすぎない。今回、提出された地層処分8100億円と返還TRU管理5600億円について言えば、費用見積もり精度は概算と呼ぶにも問題があると思う。しかも、いずれも従来の制度では未手当であり、実際に制度に組み込んで消費者からお金を取り立てるなら慎重な検証と議論が要る。
11兆円もかかるとされる再処理工場関係も、このまま信じては運用すれば将来に禍根を残そう。使用済み燃料プールのステンレスライニング板接合部にすき間が出来、継ぎ足し溶接して水漏れを起こし、別の施設では硝酸漏洩など、日本原燃の建設工事はずさんだった。今回の費用見積もりは、運転を始めたら40年も順調に動き続ける楽天的想定で成り立っている。運転開始後になって、故障や休止が相次いで計算が変わってしまう可能性大だろう。輸入技術の継ぎ接ぎで成り立っている再処理工場が完全に稼働するものか、疑う専門家もいる。「六ケ所再処理工場の信じられない不正工事!」をはじめ、草の根グループからの異議申し立てがあちこちで巻き起こっている。
グリーンピース・ジャパンは3月下旬、原子力安全・保安院に対して質問書を出している。「日本原燃の隠蔽・ずさん体質変らず、ウラン試験できる状態にない」に添えられている質問書を見ると、「『使用前検査成績書』によれば,すでにミリ単位にまで切断されたライニングプレートのすべてが、コンクリート打設が完了する前に現場に搬入されたと判断できます。すなわち、現場での『板取』工程は最初から想定されていなかったということです。しかも、そのプレートを受け取っているのは,施行会社ではなく元請会社です。不正溶接に元請会社が直接関係していた可能性があります」など、具体的な問題点に切り込んでいる。日本原燃は「現場が勝手にした」とトカゲのしっぽ切りで逃げ、品質保証体制を整えていると「再処理施設の品質保証」ページで弁明していらっしゃるが、どの文書を読んでも心に響いてこない。上っ面を整えるだけの、この人たちの体質なのだと気付いた。私がここで書いた連載「もんじゅ判決は安全審査を弾劾した」の後半部がいやでも脳裏に蘇って来た。
日本道路公団など道路4公団の40兆円を超す債務が問題になっているが、高速道路は曲がりなりにも確実に存在する固定資産だ。ここまで論じてきた通り、原発の後処理は20兆円近くを注ぎ込んでも額面通りの実現が疑われる代物である。資本主義社会の枠組みに照らせば、無展望と評してよい。
核燃料サイクルが実現すれば、燃えないウランから燃えるプルトニウムがどんどん出来るから、それで費用はかなり償えるとの幻想があって、ぎりぎりになるまで表面化させることがためらわれてきた。しかし、実際にはプルトニウムと混合したMOX燃料を燃やしてもウランの節約効果はわずかなのにコストは跳ね上がり、ウランだけ燃やし使用済み燃料は封印する運用の原発に太刀打ちできない。今回のように、やむを得ず表に出しても、きちんとしていないのは現在の技術的限界による。バックエンド技術の進歩は驚くほど遅々としていて、20年前と同様に今でも難しいままである。今は取りあえず、立ち止まって考える時だと申し上げたい。(了)
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