キリン一人勝ち時代だった1987年登場のスーパードライで,衰亡の危機にあったアサヒは生き残りを賭けて新しい味の創造を狙った。具体的にどうしたのか。私の連載コラム第3回「ビール戦争・地ビール・自ビール」(通勤ブラウザ経由・iモード可)から,ビールの味とは何か,キリン・ラガーとの対比と合わせて引用する。
「ビールの本体はちょっと甘い液体で」「混じっている苦味成分は泡にくっつく性質があり,泡を立てるほど苦味を抜いて,本体に潜む甘さを引き出すことができる。苦さと甘さの対比を飲み手の好みで意のままにできるのがビールの第1法則で,ラガーはそれに沿ったビール」
「ところが、スーパードライは」「苦味を当時のラガー比で60%に落とし,同時にアルコール度数を上げ,甘さも抜いて淡泊にしてしまった。ビールの第2法則『薄味の銘柄ほど冷やし,濃厚な銘柄ほど室温近くで飲む』と併せて,強く冷やした缶のまま飲むのに適した味付けになっている」
ラガーの缶ビール化が遅れたことを敗因にする人がいるが,間違っている。全盛時のラガーは缶のまま泡をたてずに飲んだら,苦くて,美味しくないタイプのビールだった。
スーパードライによる味の変革は,こくのある原料麦芽を積極的に減らした効果も大きい。私の連載第56回「お酒の消費に起きている地殻変動」で紹介しているように,スーパードライは明快に若い世代をターゲットにした。やはり麦芽を原料とするウイスキーを敬遠し,苦味とかスモーキーな味わいから遠い,チューハイのような飲み物がはやる世代に焦点が合っている。