二人の共通点を考えれば、イチローに続いて新庄が大リーグ入りすると聞いたとき、納得できるものがあった。前述「徹底比較」にあるとおり、二人とも「ゴールデングラブ賞7回」の好守の人なのだ。いずれも俊足をベースに強い肩を持ち、外野からの好返球で危機的な場面を救うケースが何度もあった。新庄よりもいい打者はいくらもいる。しかし、パワーはあるがドタドタと走る強打者は、大リーグには要らないと言っているのだと当時は理解した。

 Number Webにある「現地密着レポート『イチロー メジャー戦記』」の「魅了」はこう伝える。「トータルプレイヤーであるイチローのインパクトは、走攻守全てに現れている。だが、特に衝撃的なのは、守備である」

 チームのベテラン投手「モイヤーによると、この10年間でメジャーの野球の質が随分変わったのだそうだ」「『ホームランが野球の全てというような映像が流される。選手はみんなそれに乗ってウエイトトレーニングに励み、筋肉を増やし、バットスピードを速くする。体が重くなりすぎ、広い外野を守るには動きが鈍くなり、守備への細かい気配りに欠けてしまっているんだ』」

 イチローはパワー全盛の大リーグにスピードで挑む。新庄も基本は変わらない。真っ向勝負が主流の大リーグの方が、新庄のような不器用な打者には向いているかも知れない。この春先まで、日本プロ野球と大リーグとの間にはとても越せそうにない高い垣根があるように思われてきた。それが見事に消滅したことに気付かれよう。巨人の松井もまもなくフリーエージェントの資格を得る。日本プロ野球界の最良の部分は雪崩を打って流出し始めるはずだ。 (了)

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