団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

特集「年間ベスト投票&読者との対話」 (2000/01/13)

 99年の読者投票による年間ベストには、京都ベンチャーの雄、日本電産を取り上げた第77回「ハードディスクを変えた起業家魂」が選ばれました。厳密には99年分の21編に加えて、前回の読者投票の対象外だった61回と62回を対象にしています。年末年始でなかなか時間をとれない時期ですが、今回は60人の方に参加していただきました。ベストテンを拾い上げると以下のようになります。

 1)第77回   ハードディスクを変えた起業家魂
 2)第78回   臨界事故に見る行政側の背信
 2)時評     この国のメディアが持つ構造死角
 4)第74回   大学の混迷は深まるばかり
 5)第76回   臨界事故と揺らぐ原子力技術
 6)第73回   非婚化の先に見える多民族社会 
 7)第68回   日本の自動車産業が開いた禁断 
 7)第65回   ネット検索に迫っている破綻 
 9)第71回   新・たばこをめぐる日米の落差 
 9)第70回   コソボの悲劇〜連合国家解体は続く
 9)第69回   続・日本の自動車産業が開いた禁断
 このコラムの読者はメールマガジンによる配信分だけとっても、昨年初めの3,000人足らずから、年末には12,000人以上に膨れ上がっています。途中から読者になられた方は、おそらく以前のバックナンバーすべては読まれていないでしょう。ベストテンの9位に並ぶ4月ごろの3作は読者4、5千人ほどの時期のものでした。各編を読まれた方の母数を考慮すると、上位と下位の差は少なく、本当はもっと競っているのかも知れません。

◆読者からの感想と私のコメント

 「5点内で選ぶのはむずかしい。魅力的な記事が、たくさんあります」「どれも大変おもしろい。個人的にはどれも選び難いのですが」という声を多数いただいています。その全集計結果は次の通りです。

  《読者によるお気に入り投票の集計結果》
 第79回   脳のドックから痴呆症の現在まで  ***********
 第78回   臨界事故に見る行政側の背信      ************************
 第77回   ハードディスクを変えた起業家魂  *************************
 時評     この国のメディアが持つ構造死角  ************************
 第76回   臨界事故と揺らぐ原子力技術      ****************
 第75回   大地震に備える時が来ていないか  *****
 第74回   大学の混迷は深まるばかり        **********************
 時評     続・ネット検索に迫っている破綻  ***********
 第73回   非婚化の先に見える多民族社会    ***************
 第72回   遺伝子を資源化するクローン技術  **********
 第71回   新・たばこをめぐる日米の落差    ************
 時評     脳死臓器移植に見えた底の浅さ    ***********
 第70回   コソボの悲劇〜連合国家解体は続く************
 第69回   続・日本の自動車産業が開いた禁断************
 第68回   日本の自動車産業が開いた禁断    **************
 第67回   箸(はし)の国の野村ID野球      ***
 第66回   ピル、バイアグラ、そして家族    *******
 第65回   ネット検索に迫っている破綻      **************
 第64回   財政赤字・日米のここまでこれから*
 第63回   若者・流行歌・音楽文化と著作権  ****
 特集     60回までの読者お気に入り投票    *
 第62回   コメ関税化・質伴わぬ方向転換    ***
 第61回   パソコンとテレビの明日は        **********
 秋口に東海村臨界事故が発生したため、このコラムも年末にかけて、そちらに多くの関心を割きました。でもトップはわずか1票差で77回でした。そのあたりをNさんの感想がうまく語ってくれています。

 「原子力の事は周囲の対応を含めて『本当かなぁ』という気持ちがずっとあったので76・78回は胸がすく思いがしました。他のこともそうなんですが、あちこちで組織のピラミッドががったがった倒れていきそうな感じが、身の回りを含めてするのですが、PC化についていけない会社の上層部(特に中小企業)の事なんか一度取り上げて頂きたいです。77回は自分がなにをするわけではないけれど、最近あまり出会っていない勇気と希望をもてる感じがグッときました」

 Sさんにも共通した感覚があります。
 「テレビや新聞などの日常的なメディアでは、事件のたびに、みんな訳知り顔で画一的なコメントをしているので、いつも物足りなさ・歯がゆさを感じています。団藤さんのコラムは、独自の視点からさまざまな事象を解説されているのでとても興味深く毎回読んでいます。また、リンクをとおしてニュースのリソースにもアクセスできるため自分なりに深く掘り下げることもできるので、いいと思います。毎回興味深い内容で楽しんでいますが、第77回のようなストーリーもとても面白かったです。最近、人間臭さが感じられる会社・技術者が少なくなってきたように感じるからでしょうか」

 あの騒ぎの頃にちょうど、ソニーの共同創業者盛田さんが死去しました。井深さんが亡くなって書いた第37回「ベンチャー再生の日を求めて」のように再び取り組んでみようとも思ったのですが、それは先のことにしましょう。

 そして、原子力に関係ある方からは、こんな感想が届いています。まず、福井県の地方公務員Yさんからです。

 「東海村の原子力事故には様々な意味で全く驚くことばかりでした。また、遂に、政府が最も恐れたであろう、原子力事故での死者も出てしまいましたね。それでもなお、鹿児島の一村では積極的に誘致されています。この現実に何かわびしい、せつないものを感じずにはおれません。あの頃は、ヘリは何であんな低空を飛んでるんだ?交通警備のお巡りさん達は大丈夫なのか?と案じたものです。私は地方公務員でして、有事にはあらゆる人達から『命を犠牲にして事態の鎮圧に現地に行け』と言われそうで...。国は信用なりませんが、自治体もしっかりしたいものです」

 一方、日本原子力研究所にいらっしゃる研究者の方が
 「問題の捉え方、裏付けのデータの選択、非常に興味深く読ませて貰っています。大いに参考になります」
とコメントされ、76回や78回などに投票されています。臨界事故について、科学技術庁が公開するデータは、科学的なデータには不可欠な誤差の範囲を示さない断定的なものが大半です。誤差がプラスマイナス50%もあるものと、数%ですむものとでは意味が大きく違います。データそのものは原研から出ているものが多いとも聞きます。国機関の内部からも、科学的常識に則って扱うよう、チェックの声をあげていただきたいと思います。

 総合的な感想としては、
 Mさんの「ネットマガジンの多い中、インターネットならではの情報提供手法は、内容の高度さ、切り口の新鮮さもあいまって非常に有用です。今後も期待しております」

 Kさんの「知らなかった問題、気づかなかった問題、新たな考え方、などさまざまな示唆を与えていただいてます。ありがとうございます。これからも一般のマスコミにない視点の記事を楽しみにしています」

 「国の研究機関で自動車排ガスを研究している研究者」Kさんの「団藤さんの記事の切り口は面白毎回読ませて頂いております。実に良く調査されており、海外の記事、ホームページ案内は視野を広げるのに役立ちます。今後とも鋭く辛口のコラムをお願いします」

あたりを紹介しておきます。

 昨年末に「オンブズネットニューズ」の協力を得て少額カンパの窓口を開設しましたが、少額で有料化を考えてよいのでという意見もいただきました。

 まず、Kさんです。
 「読み物系で数少ない読み応えがあるメールマガジンとして楽しみにしています。要望は、(1)今後とも非マスコミのジャーナリズムとして活躍を期待したい、(2)断片情報が多い(メジャーなものはそう)メールマガジンのなかで、読み物コンテンツの価値を創造するトップランナーになって欲しい(そのためには有料も考えて欲しいのですが、気軽な少額決済がないので困りますね)。ただらなら読む、じゃあね…このままでは、インターネットは『テレビ化』する」

 Mさんからはこうでした。
 「いつも楽しみに読まさせていただいています。発行の負荷高く問題あれば、小額での有料化も考えていただいてもいいと思います。継続のために・・・」

 発行部数が1万部を超えたあたりから、ぼつぼつ有料の広告が増えつつあります。まだ毎月の経費にも追いついていませんが、今年は何らかの新しい展開を考える年になると思っています。取りあえず、自発的なカンパが集まるようになればうれしいところです。

 少数派の感想も二つ。「特に、箸(はし)の国の野村ID野球は面白かったです」(Mさん)。「最近の話題を掘り下げるというのが基本と思いますが、第1回の記事が印象として強く残っています。一見何のことはない数字の裏をかいま見たという感じでしょうか。今後も期待しています」(Sさん)

◆マスメディアが抱える問題点

 「今回投票した中でも、一番興味深く読めたものは第74回のコラムです。次に、第76、78回の臨界事故のコラムです。共に、既存のメディアの報道では全く見えてこなかった視点を与えていただけました。今後も楽しみにしています」(Kさん)

 「いわゆる大新聞の記事には、常日頃もの足りなさを感じています。良質な知性を感得させる記事、いつも楽しみに、また参考にしております。今後、期待しているテーマとしては、東アジアの現状と近未来に関わる事柄を多岐の分野にわたって取り扱って頂ければ幸いに思います」(Wさん)

 「しっかりした論調に信頼を持っています。一般の新聞・テレビ・ネット情報では言えない、というか書けない、はっきりしたことをはっきり言ってもらってすっきりして気持ちがいいです」(Nさん)

 「毎号、良質のコラムを読ませて頂きありがとうございます。このコラムのような、緻密な取材と鋭い洞察に基づいた新聞記事がもっと増えることを願って止みません」(Zさん)

 いずれも現在のマスメディアに懐疑的、批判的です。例えば臨界事故について、マスメディアからは、私及びこのコラムの読者の琴線に触れるようなレポートは結局現れませんでした。新聞社内でライターとしての職場を離れエディターをしている立場からしても、これは困った問題です。ここでは、ふたつの問題点を指摘しておきます。

 ひとつは、ライター個人が自分なりの見方を立てるよりも、情報源である官庁などと同化してしまう傾向が強まっていることです。在京メディアの典型的な取材パターンであり、特ダネはリークという形でしか現れなくなります。官庁の記者クラブを預かった記者は、その官庁が間違ったこと、悪いことをしていないか捜すのが一番の仕事だと駆け出し時代に教わったものですが、現在のライターは汚職をチェックするくらいの意味にしか捉えていない人が増えているようです。これを本当に可能にするには、その官庁の持つ価値観と対峙しうる価値観をおさえて置かねばなりません。違う土俵が存在しうると知らねば、疑問を持ったとしても情報を握っている相手に軽くひねられてしまいます。

 もうひとつは、様々な批判に曝されるようになったメディア本体が、保身のためにクリティカルな問題を避けるようになったことです。ライターから原稿が出たとしても、そんなに騒いで文句が出たらどうする、と潰してしまうことがあります。その問題ではまだ誰ひとり死んでいないではないか、実害が証明されていないと。ダイオキシンはこうして、現在の騒ぎに至るまで長く脚光を浴びることがなかったのです。

 私のコラムは、私が過去に取材で知っている事柄をまとめて書く場ではありません。インターネットの検索を使って、このテーマは現在の時点ではどうなっているのか、私自身が常に何か新しい発見を求め、調べ、書いています。戦略的な検索をしていると、次々にもたらされるウェブ資料を順番に読むだけでストーリーが見えてくる時さえあります。ものを調べる意識さえあれば可能なことが、今のマスメディアで不可能なのは、前述の問題点が個人も組織をも蝕んでいるのでしょう。

 ところで、Bさんの「いつも楽しみにしています。ことに、政治、ジャーナリズムの問題に興味をもっています。あ、それと、警察関連。マスコミが情報源として彼らと癒着している現状を打ち破るのは、インターネットであろうかと思ってみています」という見方。全面的に賛成できるかどうか、まだ保留したいところです。

◆読者からの希望テーマ

 皆さんからいろいろなご希望をいただいています。

 多岐にわたっていますが、ひとつ大きく束ねられるものに、この国の陥っている現状とその打開策です。そのグループに次のようなものです。

 Fさんの「このコラムの好きなところは新聞などの大衆紙とは違った視点で物事を見て書かれていることです。読者としての希望ですが、現在だいぶ不況から立ち直りつつある日本ですが、この国がこれからどのような方向性をもって進んでいけばよいか書いてみたらいかがでしょうか」

 Sさんの「短大の幼児教育科の教員で、運動生理学を専攻しており、子ども、身体、健康といった事柄に興味を持っています。今、一番悲観的な状況だと思っているのは、将来への負の遺産『財政赤字』です。『健康保険、介護保険』問題とも絡んで、どう処理されていくのか、調整インフレはあるのか等、採り上げて頂けたらと存じます」

 技術や教育の現状について、問題を感じている方も多いようです。

 横田均さんの「我が国の理数教育の現状と将来の日本」。「『ゆとり教育』とか言って、2002年はさらに小中学校の授業時間を減らすとか。それも『子供達が嫌い』という理由で、理数系の時間が減らされ、ついに小学校の算数から、3桁の掛け算がなくなるそうですし、分数も通分はおろか、答えが一以上になるような分数の足算も扱わないそうです」「私どもが小学生の時は、理科の時間の実験は、皆が目を輝かせて、先生の指先を見つめていたような気がします。もう一度、技術立国を目指すためには、この問題を避けて通れないように思えます」

 Iさんからは「科学者というと一般にはノーベル賞受賞者しか認知されていないような気がしますが、日本の科学者が科学の世界にどの程度貢献しているのか、ノーベル賞に値する研究があるのかないのか、そして独創的な研究は乏しいのかリポートしていただけると幸いです」

 第1回「空前の生涯独身時代」から最近の第73回「非婚化の先に見える多民族社会」まで追い続けている少子化・非婚化問題への関心も高いようです。

 Sさんの
 「現在、4歳の娘を公立保育園に預けて働いているものです。最近の政府の少子化対策。対策とは名ばかりで、ほとんど従来のばらき政治の延長であるように思います。公立保育園の待機児問題等、どうお考えになられますか?」

 Aさんの
 「遺伝子診断と生命倫理 北朝鮮と日本の関係 少子化への対応への視点 独立行政法人化と日本の学問の将来」

 98年夏にINTERNET WATCHから独立し、メールマガジンになってから、私のコラムは、どうしてこの国は泥沼に陥ってしまったのか、いろいろな場面で考えてきました。明確にそう語っている場合でなくても、これは隠れたモチーフになっているのです。これからもご希望のテーマやその周辺で、私なりの切り口をお目に掛けたいと思います。

 このほか、希望テーマにはこのようなものがありました。

 Aさん「(ベンチャーの失敗例から)敗者からみた『乗るならこれに気をつけろ』的なテーマが是非読みたいです」

 Yさん「原子力発電の問題であれば,エネルギー枯渇の問題から考えると,どのような『代案』があるのか」

 Sさん「死刑制度。人権尊重は、人権を奪う行為(例え子供でも)に対しても機能するのだろうか」

 Nさん「脳死、臓器移植の問題。日本にたいする欧米の、死や遺体に接する文化の違い等の観点からも」

 Sさん「芸術に関するコラムは無かったような気がします。美術展や美術館等の組織の事情など、芸術周辺のテーマを」

 Sさん「これからはどのようなビジネスパークが必要とされるか」

 Mさん「アメリカンフットボールだけでなく、他のスポーツでも私がやっているようなデータ分析のシステム」

 Sさん「401k及び介護問題の事をもっと勉強したい」

 予想外に広い範囲を扱っているのが、このコラムです。バックナンバーを調べていただければ、既にご希望に近いものがあるのではと思います。年初めに、これまでブラウザーで見ていただくと横に広がりすぎて読みにくかった点を、ほぼA4サイズに印字したイメージで読めるように改良しました。1年やそこらでは、本質的なところでは古くならない骨太さも売り物にしています。新作を読むのとは別の利用法を見つけていただきたいものです。



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