団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

第141回「ケータイの潜在能力を凝らし見る」 (2004/02/04)

 2003年末の携帯電話契約数が7978万件に達した。これと別にPHS契約が522万件あるから、8500万台のケータイが存在していることになる。今年1月初め発表の電気通信事業者協会(TCA)の「契約数」にある。世帯普及率が問われる家電製品とケータイが決定的に違っているのは、個人普及率の高さであり、実に7割にもなるのだ。ブロードバンド化とかテレビ放送が見えるようになるとか、ハイテク系の装備が相変わらず売り物になっているが、今年はケータイと周辺で今までにない動きが表面化する年でもある。高い知的潜在力を備えた携帯機器が化け物のように普及した今、使い方を見直せば全く違う生かし方・現れ方が潜んでいると考えるようになった。


◆個人の健康管理ツール化は必至

 いつも決まった個人のそばにあるのだから、まずカロリーの消費と摂取の両方を継続的に管理する機能を直ぐにでも開発して欲しい。毎日のカロリー出納が年間通して記録できるものが出来るはずだ。肥満・体重管理に悩んでいる多くの人から絶大な支持を得られるだろう。カロリーを入れる方も出す方も、自分でコントロールしようとする意欲は飛躍的に高まろう。

 そんなに難しい技術ではない。現在は見あたらないが、かつては携帯型のカロリーメーターが1万円ほどの商品として売られていた。小さな加速度計を内蔵し歩いたり走ったりの運動強度を刻々割り出し、持ち主の体重とかけ算して消費カロリーを自動積算していた。ケータイにこの機能を付加して使えばいい。ポケットに入れて動くと中で躍るから測定が不正確になり、ベルトのケースにでも入れて固定する必要があるが、今でも、そうしているビジネスマンは多いはず。カロリー消費には運動によるのと別に、体温を保つための基礎代謝があり、寝ころんでいても何もしていなくても一定量が使われるのは、皆さんご存じの通り。この推計は体格を知ればできるから自動積算は容易である。

 カロリー摂取の方はこんな自動化は難しいが、代表的な食べ物をケータイの画面で並べ、食べたものを選択する方式でも作れば入力の煩わしさから逃げられる。社員食堂などでカロリー表示があれば、もっと簡単だ。なお、食べた食物を胃腸で消化するのに1割ほどのカロリーを消費するので、これは消費側に差し引かねばならない。食後の体温上昇はこのために起きる。

 ここまで書いて、加速度計型のカロリー消費計が無いはずがないと、念のために検索したら、次の記事が見つかった。「米国ニュービジネス発掘−45−独自技術の機器提供で差別化 健康・医療情報提供サービス 」にこうある。「CT1は、ポケットベルのような形をしており、万歩計のように腰につけると、体の動きを測定、記録し、燃焼したカロリーをモニターする」「これをコンピューターに接続したドッキングステーションに差し込むだけで、CT1のデータがウエブサイトにアップロードされ、自分専用のページで燃焼カロリーのグラフが表示される」「グラフは過去24時間、1週間、1ヶ月、1年単位で、点線、棒線、または3Dグラフで表示可能だ」

 このニュービジネスはウェブ上で集計して商売にしているが、現在のケータイほどの能力があれば、間違いなく自己完結できる。超えるべき山は加速度計チップを内蔵するだけのことである。ほぼリアルタイムに自分のカロリー出納がケータイの画面に出てくる日を期待して待とう。

 米国の例と似た発想の未来プラン「女性の生理(月経)を携帯電話で管理」というサイトも見つけた。妊娠の管理に使うのだ。このような個人データを意味がある連続データとして、ケータイ本体に取り込めるようになって、ちっともおかしくない。ケータイのソフト屋さんにそこまでの目配りが出来ていないだけだ。


◆存在証明は社会の在りように響く

 ヒットした映画「マイノリティ・レポート」の未来都市では、網膜パターンによる識別装置が街中にあって、逃げる主人公はどこに行こうと通過点を把握されることになる。現実がそこまで進むには時間がかかるとも思ったが、ケータイに仕掛ければ存在証明にもっと様々な変形が現れそうだ。ただ、今直ぐというならアリバイの証明にはGPS機能を使えばいい。例えばauのGPS携帯電話同士なら持っている相手の位置を割り出してくれる。GPS携帯についてはネプロジャパン社のモバイルレポートが調査して、現在の使用頻度は少なくとも関心が高まっているとしている。

 私が関心を持ったのはもっと間接的なものだ。これがなかなかに興味深い。一つ目は象印マホービンの「みまもりほっとライン」である。高齢者がポットを使った時間を記録して、遠く離れた家族に一日2度のメールで届ける。定期的に食事をしているか、などが読みとれる。もちろん、ポットが使われなくなったら一大事となる。

 二つ目は今年2月から始まるITmediaの「メールでこどもの登下校を通知。DNPなどが無線タグを利用したサービスを開始」である。「こどもにカードタイプやバックなどにぶら下げる無線タグを配布。こどもが、塾の教室や学校の出入り口に設置されたリーダに無線タグをかざすことで、登下校時刻を保護者にメールで通知する」。連れ去り事件がこんなにも起きると、親にとって塾に行ったかを気にする以外にも役に立とう。

 asahi.com 関西の「子どもの危険、父母に配信 携帯メールで不審者情報」に現れているように、門真や枚方、あるいは関東でも既にPTAや学校がいくつも連合して不審者情報を集め、自ら配信、自衛している。

 いずれもケータイはメールを受けるだけの役目だが、ケータイ側にも無線タグの機能が搭載される計画がある。「FeliCa搭載で携帯はこうなる」は今年夏以降について言う。「FeliCaはソニーが開発した非接触ICチップのひとつ。JR東日本の『Suica』やビットワレットの『Edy』に使われていることで有名だ。簡単にいえば、携帯電話がSuicaやEdyの代わりに使えるようになる」

 定期券や財布代わりになり、買った商品などの記録が自動的に残るくらいまでは、単純に便利とするべきか。しかし、もっと進めば、自分の行動記録が自動的に残ると同時に、もし第三者が何かを仕掛ければ見られてしまう――大いに迷惑と感じるか、何かに使えると考えるか。

 誰かの存在証明については、ケータイはもっと単純なやり方でも力を持つかも知れない。つい最近、ケータイで撮った写真をメールで送信するだけで、ネット上の自分のページにどんどんアップされるシステムを備えた「moblog」があると知った。流行のBlog(ブログ)をケータイ向けに簡便に実現しており、ブログ絵日記版ともいえる。気になるものを撮影したらメールで送る――長々とした文章を書くのはケータイの生理に合わない――デジカメ付きケータイの本領はこの形でより発揮されようだ。まだ、利用者はそれほど多くはないようだが、広まる可能性は大とみた。

 街中でみんなで撮影しまくって、即座にミニ・ホームページに写真が掲示されていく。思わぬ人に写されて、思わぬページに自分の姿が垣間見えるなんてことも起きるかも知れない。撮影者自身のアリバイ証明にもなる。上述した見守りポットや登下校無線タグといい、今直ぐでもミステリー小説のネタになりそうである。意図するかどうかは別として、個人の行動がケータイを媒介にして可視化される・監視される・証明される……。ケータイ高密度普及に、やや不気味な明日が見えていると感じる。



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