団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

十分に警察国家であると気付かれぬとは [ブログ時評04] (2004/12/19)

(「ブログ時評」に同文掲載。TBなどはそちらに)

 全国の警察のトップ「国家公安委員長」を務めた経歴がある元自治相・白川勝彦氏が、渋谷の街頭で突然、警察官4人組に取り囲まれ、動くこともままならない状態で違法と言うべき「執拗に身体検査をしようとする」職務質問を受けたと、自らのウェブに長文の一部始終レポートを書いて話題になっている。「忍び寄る警察国家の影」で、一部のスポーツ紙やテレビ番組でも紹介された。

 弁護士でもある白川氏は「いま私が受けていることがこの職務質問であるとしたならば空恐ろしいことであり、曖昧に済ますことはできないと思ったのです」と、渋谷署まで乗り込んで抗議した。副署長が出てきて白川氏と判ってから「今日の職務質問で一番問題だったことは、ズボンのポケットの中のものを見せなさいといって、ズボンの上から強く触ったことである。見せる見せないは、あくまで私の意思でやることであって、これを強制する権限は君たちにない。『怪しいものがないのなら、見せてもいいじゃないですか』と君たちは執拗にいったが、それは根本が違うのだ」と説教している。

 そして、「私が受けたような職務質問が公然と許されるようになれば、わが国は早晩警察国家となるでしょう」との結論になるのだが、ブログの世界では素直に読んで、額面通り素直に驚く人ばかりではない。選挙に敗れ、野に下った白川氏が今ごろ気付いても遅いのではないか。

 以前に活動家の経験がある「旗旗」の「元国家公安委員長・自治大臣が警察被害に遭遇」は、もう日常的に行われていることだと指摘する。「昭和天皇在位60年式典の当日には、会場近くの両国駅から降りる人全員に所持品検査が強制され、女性のハンドバッグの中まで開けさせています。これらが決して『任意』と言えないのは、当の白川先生自身が身を持って経験されたことですよね!」

 「現在は、警察の『民主性』に次いで、かろうじて『建て前』としてのみ維持されてきた『政治的中立性』が大きくゆらいでいます。つまり、目的意識的にイラク戦争に反対する主張を潰そうという意図が、あまりにも露骨に表れてきています。今の公安は『お国にたてつくものを弾圧する』という政治警察そのものになりつつあります。その相手が『過激派』だろうが市民運動だろうが個人だろうが関係ありません」。その公安警察のイラク反戦デモへの生々しい規制ぶり、罵倒ぶりが動画として記録、公開されており必見である。活動家歴が気になる方も映像を見て判断されたい。

 最近、秋葉原付近では職務質問が強化されているらしい。「さいくろん光画録」の「2004年11月11日(木) はわわ…そんなバカナー!」はパソコンのばらし道具一式の中にあった多機能「レザーマンナイフ」所持で軽犯罪法違反とされ、任意同行された状況を描いている。

 「警官に囲まれ、取調室のあるらしい4階へと向かう」「そこで全身くまなく探られるんですよっ!。高圧的な態度の偉そうな人が出てきて『協力的でないと逮捕するかもしれないっ!』と脅しますっ!」「釣りやキャンプなどの『ナイフを使うシチュエーション』で持ち歩くのは問題無いらしいのだ」「秋葉でパソコンばらすのに必要だから持ち歩いていたんだけどなぁ…」「どうもそれじゃ理由にならないらしいっ」。

 これで取り扱いに抗議でもしてトラブルでも起きれば、公務執行妨害で逮捕が常套手段と化しているという。他の所轄署の範囲まで越境して職務質問で検挙件数を稼ぐ例など、ブログ上には関連する様々な話題がある。

 12月16日には、立川市の市民団体メンバー3人が反戦ビラ配布事件で無罪判決を得た。防衛庁官舎の新聞受けに入れたことが、住居侵入罪になると突然、逮捕され、75日間も勾留が続けられた。東京地裁八王子支部判決は「憲法で保証された政治的表現活動の一つであり、刑事罰にするほどの違法性はない」と明快だったが、非常に押さえた報道しかしない全国紙が出たことは驚きだった。また、裁判所のありようにも実は疑問がある。

 「虎視牛歩」の「妥協としか言わざるを得ない反戦ビラ配り判決」は判決を簡単に賞賛はできないとする立場だ。「ビラ配布から一か月以上もたってから、前触れもなくいきなり逮捕、と同時に家宅捜索(ガサ)で根こそぎ資料を押収され、そして警察発表による報道の垂れ流し。さらに接見禁止をつけられての勾留が二ヶ月を越えている」「この苦痛を裁判所は容認したのである。公訴棄却という検察や警察に対するペナルティがあってしかるべきなのに、公訴棄却は退けた。どう考えても警察・検察による弾圧目的の逮捕・起訴を追認したことにならないだろうか? というか、公訴棄却を避けたことにより、今後この種の弾圧があっても構わないという容認の姿勢が顕著ではないか。警察も検察もペナルティどころか控訴して失地回復する余地すらある」

 「辺境通信」の「反戦ビラ入れで無罪判決」は5月14日付の東京新聞の内容をこう引用している。「調べは一日六時間から八時間。『運動なんかやめろ』『この寄生虫』『自転車で立川を走れないようにしてやる』『おまえは鉄砲玉。ほかの連中は責任を押しつけるつもりだ』。・・・実家にも『娘さんはヤクザの使い走りをしている』と電話があったという」。そして「逮捕されたメンバーの一人が『人権と報道・連絡会』主催のシンポジウム(11月20日開催)で語ったところによると、『取り調べの7〜8割は人格攻撃』だったそうだ」と指摘している。上述のデモ規制動画に現れる刑事たちと75日間、想像するだに精神的拷問である。

 お国に逆らえば見せしめとして、こんなことも出来る――汚い取り調べが可能だったのは裁判所が長期に勾留延長を認めたからである。警察内部でも、公安警察主導で進んだ捜査への反省はおそらくないのではないか。入社して4年間はサツ回りしかしなかったこともあり「公安がこんなことで反省したら仕事にならない」と思うだろうと透けて見える。淡々としているマスメディアが出ると、暗に支持されていると感じよう。それにしても、これだけ警察国家になっているのに、近年、重要な事件で犯人が捕まらない印象が強い。犯罪捜査能力は全国的に落ちていると同僚と話し合ったことがある。外国人犯罪増加だけでない、犯罪者側の構造的な変化に後れをとっていないか。



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