原発:電力会社と国の常識外れ [ブログ時評16]

 昨年夏に死傷者11人を出した美浜原発事故の責任問題で、関西電力は藤社長の降格を打ち出した。しかし、秋山会長は1年間そのまま職に留まり、来年6月に辞任する際に今回降格する藤社長が後継会長になる可能性が取りざたされている。一方、原発震災で注目されている浜岡原発訴訟で静岡地裁は、原告が求めている原子炉格納容器の耐震性計算書などのほぼ全面的な開示を命じた。これまでのように企業秘密を理由に数値などを伏せることを許さず「社会共通の要請」とした。いずれも原発の世界が依然として世間常識から外れていることを示す好例である。

 「美浜原発事故最終報告書案が提出される」(技術者の目)は関電の過失を「配管の配置が変更されても図面に反映せず保守管理業務発注者の義務を怠る」「配管の寿命が1年未満と判明しても技術基準を独自解釈して補修を怠る」、三菱重工の過失を「配管の点検箇所の登録を社員一人に膨大な作業を任せ登録ミスを誘発させた」「配管の点検箇所の登録漏れを気付いたのに関西電力に報告を怠る」とまとめている。類似事故を防ぐために第三者のチェック機関を設けてとの提案をしているのは、実質、国に対する不信任だ。

 「原子力安全・保安院はこれで良いのか??」(年寄りの冷や水)が言う指摘が妥当だろう。「原子力安全・保安院は、国民のために、このような国、企業を含めた全体の安全・保安体制について考える組織ではなかろうか」「国の決めた基準を企業が守っていないから、国の責任は何もなしとして企業の責任だけを追及するだけでは不満足である。何故このような現象が発生しているのかまで追及すべきである」。国には責任はないと口をぬぐう姿勢に不信は高まっているのだ。

 浜岡原発訴訟で原告側にいるらしい「薔薇、または陽だまりの猫」の「地震と原発/静岡地裁が中電に『文書全面開示』を命令」は裁判所への信頼を書いている。「データ開示により、東海地震に対する原子炉建屋・周辺機器などの耐震強度について、第3者専門家による検証が可能になったことに、絶大な評価をしていると同時に、裁判所の原発の安全性に関する認識が私たちの主張してきたものに等しいと言え、とても心強く感じています」。中部電力は抵抗するかも知れないが、電力会社任せでない検証ができ、初めて議論らしい議論が可能になる。浜岡原発は耐震強化策が取られると発表されているが、それで足りるのかも検証が要る。東海地震の緊急性を考えれば急ぐ。

 東京電力の原発見学ツアーで何が行われているのか。原発内部が見たくて参加しレポートしている方がいる。「柏崎刈羽原子力発電所の見学」(T家の日記)はこう。「実際行ってみるとテロ対策とかで原発の内部には入れず、サファリパークのようにバスで原発の建物の周りぐるぐる回って」「正直あまり面白くなかったんですが、ここで特筆したいのは、参加費8,000円にしては食事・ホテルが豪華であるということです」「今回参加者のほとんどは2回目、3回目・・というのには驚きでした」。豪華な部屋、食事の連続に、お土産はカニ1箱。実態を市民の目で記録しておく価値はある。

 原発をめぐる論議は難しくて、若い世代には「ださい」と敬遠される傾向がある。原発を巡る住民運動の高齢化が進んでいるが、身近なところで見えるものをウオッチすることに熱心な人がネット上で増えれば、また新たな展開が可能になろう。