日本コミック発の香港映画が特大ヒット [ブログ時評28]
日本のコミック「頭文字D」(イニシャルD)を実写にした香港映画が、CNNによると香港で「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」を大きく上回る興行収入を記録している。中国本土では熱狂が起き、チケット販売額は2週間で5500万元(7億5千万円)、香港や台湾を加えると1億元を超えると「《頭文字D》広州功労祝宴会V視聴!」(F4迷のひとりごと るるるF4♪)が伝えている。
物語の舞台は群馬県の峠道。カーブだらけの下り道で「走り屋」と呼ばれる若者たちが運転のテクニック、車のチューン技術を競う公道レースをしている。元・走り屋、豆腐屋の父に命じられ、往年の名車「ハチロク」で峠を越えて早朝配達している高校生拓海がそこに登場して……。何とも日本的な設定なのに、香港映画のスタッフが台湾の若手トップシンガー、ジェイ・チョウを主役に起用し、不可能と思われていたレースシーンの実写をやってしまった。ロケは日本で、言葉は広東語という不思議さ。恋人役は日本人タレントの鈴木杏。
このコミックを元にCGを多用して作られたアニメを、私はテレビ放送時から気に入っていて、全て見た。意図的にタイヤを滑らせ、四輪ドリフトで自在にカーブの連続をすり抜けるなど、実写で撮り切ろうとするとは狂気の沙汰。同じように思っていただろう「頭文字D」(タフのココログ日記)は「映像見て思ったのはやっぱり日本よりも香港映画のほうがクオリティが高い気がする。てか日本じゃ出来ないだろうな」と感想を寄せている。日本公開は9月で吹き替えと原語版と両立てになる。映画公式サイト「頭文字D」では、原作者しげの秀一さんのインタビューがあり、「実力のある人がきちんと作った。制作者に喝采したい」と話している。
大ヒットのニュースはCNNの英語版で最初に知った。何故か、国内マスメディアには流れていない。それくらいマイナーなものに中国で熱狂が起きるのが面白い。CNN英語版は春の大規模反日デモにも触れて、「香港の人たちが日本へ強い関心を示しているのと対照的だ」としていた。しかし、その後、伝えられたことから見れば香港に限られた現象ではなかった。文化的にも人的にも混淆、融合した状況を、現地にいる「淮海中路日記・上海淮海中路887号からお送りします。」は「登場人物の名前も地名も全部日本のまんま。藤原拓海とか群馬ナンバーとか秋名山とか。それなのに登場人物は平気でマンダリン、というのは今までにない面白い状況であるなあ」と書いている。
理屈抜きに何かが変わったと思わせる。その何かを同定するために、もう少し成り行きを見守りたい。国と国の間とまでは言わないが、人々の間にあった心理的な壁のどこかを崩しそうな気配がする。
【追補7/13】「日本コミック発の香港映画が特大ヒット [ブログ時評28]」を読まれたマレーシアの読者から、興味深いメールをいただきました。中国と東南アジアは同時公開でしたので、現地の雰囲気を伝える貴重な情報だと思います。昨夜も、同僚と映画を見た現地の人にインタビューに行くべきだ、と論じ合ったばかりでした。ブログ時評で[香港映画「頭文字D」を見た海外読者からのメールです]として掲示しています。是非、ご覧ください。
物語の舞台は群馬県の峠道。カーブだらけの下り道で「走り屋」と呼ばれる若者たちが運転のテクニック、車のチューン技術を競う公道レースをしている。元・走り屋、豆腐屋の父に命じられ、往年の名車「ハチロク」で峠を越えて早朝配達している高校生拓海がそこに登場して……。何とも日本的な設定なのに、香港映画のスタッフが台湾の若手トップシンガー、ジェイ・チョウを主役に起用し、不可能と思われていたレースシーンの実写をやってしまった。ロケは日本で、言葉は広東語という不思議さ。恋人役は日本人タレントの鈴木杏。
このコミックを元にCGを多用して作られたアニメを、私はテレビ放送時から気に入っていて、全て見た。意図的にタイヤを滑らせ、四輪ドリフトで自在にカーブの連続をすり抜けるなど、実写で撮り切ろうとするとは狂気の沙汰。同じように思っていただろう「頭文字D」(タフのココログ日記)は「映像見て思ったのはやっぱり日本よりも香港映画のほうがクオリティが高い気がする。てか日本じゃ出来ないだろうな」と感想を寄せている。日本公開は9月で吹き替えと原語版と両立てになる。映画公式サイト「頭文字D」では、原作者しげの秀一さんのインタビューがあり、「実力のある人がきちんと作った。制作者に喝采したい」と話している。
大ヒットのニュースはCNNの英語版で最初に知った。何故か、国内マスメディアには流れていない。それくらいマイナーなものに中国で熱狂が起きるのが面白い。CNN英語版は春の大規模反日デモにも触れて、「香港の人たちが日本へ強い関心を示しているのと対照的だ」としていた。しかし、その後、伝えられたことから見れば香港に限られた現象ではなかった。文化的にも人的にも混淆、融合した状況を、現地にいる「淮海中路日記・上海淮海中路887号からお送りします。」は「登場人物の名前も地名も全部日本のまんま。藤原拓海とか群馬ナンバーとか秋名山とか。それなのに登場人物は平気でマンダリン、というのは今までにない面白い状況であるなあ」と書いている。
理屈抜きに何かが変わったと思わせる。その何かを同定するために、もう少し成り行きを見守りたい。国と国の間とまでは言わないが、人々の間にあった心理的な壁のどこかを崩しそうな気配がする。
【追補7/13】「日本コミック発の香港映画が特大ヒット [ブログ時評28]」を読まれたマレーシアの読者から、興味深いメールをいただきました。中国と東南アジアは同時公開でしたので、現地の雰囲気を伝える貴重な情報だと思います。昨夜も、同僚と映画を見た現地の人にインタビューに行くべきだ、と論じ合ったばかりでした。ブログ時評で[香港映画「頭文字D」を見た海外読者からのメールです]として掲示しています。是非、ご覧ください。