再生の困難に船出する前原・民主党へ [ブログ時評33]

 歴史的な総選挙大敗をしたからといって時は待ってくれない。国会の召集が迫る中で、民主党は43歳の新代表、前原誠司氏を2票差の接戦で選出した。代表選を争った菅氏が受けてくれなかったので鳩山由紀夫元代表(58)を幹事長に、若手グループの野田佳彦氏(48)を国会対策委員長に、松本剛明氏(46)を政策面の取り回し役、政調会長にする布陣が発表された。もう一人のキーパーソン小沢一郎氏には代表代行を要請するという。前原氏が本当は何者か、まだ私にも、また読者の皆さんにも分かっていないことを前提に、民主党の今後を考えたい。

 旧社会党系と旧民社党系のグループに声が掛からなかった点が、今回の人事を象徴している。「前原民主党、新体制の骨格」(sissyboy)が指摘する三大特徴「旧党派色に対する配慮を排除した」「保守二大政党を目指す姿勢を鮮明にした」「代表トップダウン型の政策形成を目指した体制」は多くの方が首肯すると思う。

 総選挙の敗北要因として、支援する労組との関係を「既得権擁護」と小泉自民党から突かれた。「前原誠司の基本姿勢」で「労働組合、各種業界との関係などについて、既得権擁護的議論は根絶する」と主張したことを実行したのだろう。「地域で頑張っている仲間と歩き、直接に国民の喜び、悲しみ、楽しみ、怒りを実感するのが真の政治家」と言っているのだから、「05年9月:民主党再建の方向性」(YamaguchiJiro.com)の「問題は、労働組合という組織と働く市民とがずれているという点にある。これは第一点とも関係するが、連合を構成する大労組に所属する労働者は、比較的恵まれた層であり、既得権も持っている。そうした労組の組織率は低下する一方で、不安定な非正規雇用が急増している。そして、そのことが国民年金や国民健康保険などの社会保障制度の土台を揺るがしている」との指摘にも留意してもらいたい。

 森前首相は選挙後に「候補者の皆さんには自分の力で当選したなどと思わないで欲しい。自民党には、地域に商工会議所など一生懸命働いてくれた組織があるのだから」と、例のマドンナたちに苦言を呈した。あちらも既得権益どっぷりの手足を殺ぎ落とす番になっているとは言え、自民と違う、拠って立つ足場をどう構築するのか。

 「前原民主党の厳しい前途」(使者の世迷い言)は辛らつに言っている。「しかし、労組に代わって安定的な支持層を作れるのかというと疑問である。民主党は今まで一般有権者に対して自分たちのための政党だ、と思わせるような努力、いい方を変えればファンの獲得する努力をした形跡が無い。いつも自民の失態と、気紛れな無党派層に頼った選挙しかしてないのだ。これを何とかしない限り、旧社会党のような万年野党に堕してしまうだろう」

 とは言え、若さ、清新さへの期待がブログのあちこちから読み取れるのも事実だ。「期待感を持たせる民主党の前原新代表」(阿木雅芳の「春夏秋冬」)の「18日朝のテレビの報道番組を次々とハシゴして前原氏の発言を聞いて『この人が党のトップなら4年後には民主党政権が実現するかもしれない」と思わせた。清新な印象だ。発言内容も一本、筋が通っている。『民主党が、労働組合から支持を受けているからといって、労働組合のいいなりにはならない』ときっぱり言い切ったところがいい」などである。

 40代で英国・労働党を再生したブレア首相や、同じ43歳で大統領になったジョン・F・ケネディを持ち出す人もいる。一方、自衛権をめぐる憲法改正問題への危惧など不安に感じる方も多い。しかし、私は、小泉チルドレンに働きぶりを見る猶予を与えるのと同様に、しばらくは前原・民主党も見守るのが筋だと考える。とてつもない困難が待っている。代表の任期切れは1年後だ。小沢一郎氏は2年後の参院選をにらんで局外に出た。この1年間、苦労する前原氏とどちらが有利か。政治のドラマとして、これも注目である。