パフィーの米国ブレイクを解読する [ブログ時評43]
「ゆるゆる」した雰囲気のJポップ女性デュオ、パフィーの米国アニメが大ヒット、「PUFFY AMI YUMI」として人気爆発と伝えられたのが1年前。特別なファンではないものの、香港、台湾、アジアでの人気を知って以前から気になっていたグループだ。今年は米国でのコンサートツアーも大成功、国民的行事であるニューヨークの感謝祭パレードに招かれたり、日経BP社・日本イノベーター大賞でジャパンクール賞に選ばれ、『文藝春秋』新年号の「世界に輝く日本人20」に登場と、ますます盛んだ。良いニュースが少ない年の瀬、予想外に拡大するブレイクぶりを解読したくなった。
日本語版以上に詳しい英語版ウィキペディア「Puffy Amiyumi」があり、英語資料へのリンクも豊富。まず、彼女たちの活躍ぶりを動画で確認しておこう。アニメ「Hi Hi Puffy Ami Yumi」を製作している「カートゥンネットワーク」へ行き、「in Cincert」を見よう。曲は「ブギウギNo.5」。米国ティーンに熱狂的に迎えられているライブの舞台が、全く日本のまま、脱力感漂う日本語の歌なのは最初、ちょっと異様に見えた。別のライブシーンも見られ、英語の歌もあるのだが、これは「カタカナ英語」だろう。「日本のままで良い」とCartoon Network側に言われて始まったブレイクであることを確認しよう。それにしても、この二人はほとんどユニゾン、つまり斉唱しかしないのだが、声の相性が良く「1+1」以上の表現力になってしまう。
ここにはブレークの伏線になったヒットアニメ「TEEN TITANS」のテーマソングビデオも置いてある。彼女たちは「TEEN TITANS」から「Hi Hi Puffy Ami Yumi」で米国内に露出する機会を得て認められた。それは決して宣伝の力ではない。米国のBBSにある「How you got hooked on Puffy's Music? 」で、ニューヨークの「Amifan」が「日本に行ってテレビ番組のビデオテープを買い込み、米国に戻ってからキュートな音楽が2本目の最後にあると気付いた。それがパフィーだった」と書いているように、誰も彼もでなくとも、ある範囲の人たちには発見されて当然の音楽だったのだ。
2002年に初めて試みた米国ツアーについて「米紙、米国公演のパフィーを酷評」のニュースが共同通信配信で流れ、当時の「斑猫の日記」が面白い記録を残している。「ピント外れた批判だなぁと思ってワシントンポストのWebを調べてみたら」「『米国のロックスターとは全然スタンスが違いワケが解らない。彼女らは米国での成功を望んでいないようにすら思える。実際米国を征服することはないだろうが、ショービズ界を引っかきまわす事にはなるだろう』という感じで、むしろ驚きを持ってパフィーを紹介した記事のように読めたのですが」。つまり、最初の米国ツアーで既に予感はあった。
全米アニメでトップになり「パフィー 視聴率『全米1位』」(山本通信)が放送プロデューサーのデーブ・スペクター氏の言葉を引用している。「アメリカのティーンエージャーに受けるのもよく分かる。陽気で、ぶっ飛んでいて、ハッピー、それで退廃的な要素もある。音楽もアメリカ人の好きな60年代のようなポップス。日本的ではなく、米国風の作りになっているのがよかったんじゃないかな」
パフィーの音楽はロックミュージシャン奥田民生が中心になってプロデュースしている。ビートルズやアバなど懐かしいロックをふんだんに「引用」し、ちりばめていて知っている人なら、にやりとしてしまう。ミリオンセラーのデビュー作「アジアの純真」にほれ込んでいた「パフィー『これが私の生きる道』のアナリーゼ(96/11/14掲載)」はこう言う。「この曲を最初聴いた時は前作のインパクトには到底及ばない凡作という印象でした。ところが、間奏のギター・ソロがビートルズの『DAY TRIPPER』のリフの引用だと気づいた途端これはとんでもない曲だと思えてきたのです」「いたるところビートルズの引用だらけです。前作は陽水の言葉遊び、そして今回はビートルズのパロディーと、プロデューサーの奥田民生(元ユニコーン)のセンスには完全に脱帽です」
米国にいる日本人からの発言も収録しよう。「Happy Thanks Giving」は「パフィーが New York で催された Thanks Giving Parade に日本人として初参加。こちらのテレビでも放映された。鳴り物入りでデビューした松田聖子もウタダヒカルも完全に失敗した米国市場で、あの(けだるそうな)パフィーがしっかりと成功しているさまは、ある意味で痛快でさえある」と、驚きを伝えている。
この感謝祭パレードに先立って、「PUFFY、外国人記者クラブにて記者会見」があった。由美がこう言っている。「もちろんアメリカに行っても、私たちは、今までやってきたまま、そうじゃないとやっぱりできないし。『急にアメリカだからアメリカ用にキャラクターを変えるっていうこともできませんよ』ということをお伝えしたら、『それは全然そのままでいいですよ』って言ってくださっているので、今アメリカでもできてると思います」
この「地のまま」路線で、どこまで行けるのだろう。米国BBSを読んでいると日本語歌詞のままで共感している人もかなり多い。言葉は分からなくてもエモーショナルだと言う。もう亡くなった科学部の先輩が、アフリカ人の客を自宅に招いて日本人の歌を片っ端から聞かせたら、美空ひばりの所で止まったそうだ。「意味は分からないが、訴えるものがある」と言われた。ひばりとパフィーを比較するつもりはないが、同様に言葉を超えているものが確かにある。
日本語版以上に詳しい英語版ウィキペディア「Puffy Amiyumi」があり、英語資料へのリンクも豊富。まず、彼女たちの活躍ぶりを動画で確認しておこう。アニメ「Hi Hi Puffy Ami Yumi」を製作している「カートゥンネットワーク」へ行き、「in Cincert」を見よう。曲は「ブギウギNo.5」。米国ティーンに熱狂的に迎えられているライブの舞台が、全く日本のまま、脱力感漂う日本語の歌なのは最初、ちょっと異様に見えた。別のライブシーンも見られ、英語の歌もあるのだが、これは「カタカナ英語」だろう。「日本のままで良い」とCartoon Network側に言われて始まったブレイクであることを確認しよう。それにしても、この二人はほとんどユニゾン、つまり斉唱しかしないのだが、声の相性が良く「1+1」以上の表現力になってしまう。
ここにはブレークの伏線になったヒットアニメ「TEEN TITANS」のテーマソングビデオも置いてある。彼女たちは「TEEN TITANS」から「Hi Hi Puffy Ami Yumi」で米国内に露出する機会を得て認められた。それは決して宣伝の力ではない。米国のBBSにある「How you got hooked on Puffy's Music? 」で、ニューヨークの「Amifan」が「日本に行ってテレビ番組のビデオテープを買い込み、米国に戻ってからキュートな音楽が2本目の最後にあると気付いた。それがパフィーだった」と書いているように、誰も彼もでなくとも、ある範囲の人たちには発見されて当然の音楽だったのだ。
2002年に初めて試みた米国ツアーについて「米紙、米国公演のパフィーを酷評」のニュースが共同通信配信で流れ、当時の「斑猫の日記」が面白い記録を残している。「ピント外れた批判だなぁと思ってワシントンポストのWebを調べてみたら」「『米国のロックスターとは全然スタンスが違いワケが解らない。彼女らは米国での成功を望んでいないようにすら思える。実際米国を征服することはないだろうが、ショービズ界を引っかきまわす事にはなるだろう』という感じで、むしろ驚きを持ってパフィーを紹介した記事のように読めたのですが」。つまり、最初の米国ツアーで既に予感はあった。
全米アニメでトップになり「パフィー 視聴率『全米1位』」(山本通信)が放送プロデューサーのデーブ・スペクター氏の言葉を引用している。「アメリカのティーンエージャーに受けるのもよく分かる。陽気で、ぶっ飛んでいて、ハッピー、それで退廃的な要素もある。音楽もアメリカ人の好きな60年代のようなポップス。日本的ではなく、米国風の作りになっているのがよかったんじゃないかな」
パフィーの音楽はロックミュージシャン奥田民生が中心になってプロデュースしている。ビートルズやアバなど懐かしいロックをふんだんに「引用」し、ちりばめていて知っている人なら、にやりとしてしまう。ミリオンセラーのデビュー作「アジアの純真」にほれ込んでいた「パフィー『これが私の生きる道』のアナリーゼ(96/11/14掲載)」はこう言う。「この曲を最初聴いた時は前作のインパクトには到底及ばない凡作という印象でした。ところが、間奏のギター・ソロがビートルズの『DAY TRIPPER』のリフの引用だと気づいた途端これはとんでもない曲だと思えてきたのです」「いたるところビートルズの引用だらけです。前作は陽水の言葉遊び、そして今回はビートルズのパロディーと、プロデューサーの奥田民生(元ユニコーン)のセンスには完全に脱帽です」
米国にいる日本人からの発言も収録しよう。「Happy Thanks Giving」は「パフィーが New York で催された Thanks Giving Parade に日本人として初参加。こちらのテレビでも放映された。鳴り物入りでデビューした松田聖子もウタダヒカルも完全に失敗した米国市場で、あの(けだるそうな)パフィーがしっかりと成功しているさまは、ある意味で痛快でさえある」と、驚きを伝えている。
この感謝祭パレードに先立って、「PUFFY、外国人記者クラブにて記者会見」があった。由美がこう言っている。「もちろんアメリカに行っても、私たちは、今までやってきたまま、そうじゃないとやっぱりできないし。『急にアメリカだからアメリカ用にキャラクターを変えるっていうこともできませんよ』ということをお伝えしたら、『それは全然そのままでいいですよ』って言ってくださっているので、今アメリカでもできてると思います」
この「地のまま」路線で、どこまで行けるのだろう。米国BBSを読んでいると日本語歌詞のままで共感している人もかなり多い。言葉は分からなくてもエモーショナルだと言う。もう亡くなった科学部の先輩が、アフリカ人の客を自宅に招いて日本人の歌を片っ端から聞かせたら、美空ひばりの所で止まったそうだ。「意味は分からないが、訴えるものがある」と言われた。ひばりとパフィーを比較するつもりはないが、同様に言葉を超えているものが確かにある。