ライブドア『虚業の楼閣』めぐる攻防 [ブログ時評46]

 IT銘柄の代表格であり、ホリエモンこと堀江貴文社長の下で急成長してきたライブドアに、東京地検特捜部が強制捜査に入った。容疑は関連会社の証券取引法違反ながら、ライブドア本体に粉飾決算の疑いが浮上、株式の上場が維持できるか疑問の声さえある。突如800億円の社債を発行し、フジテレビを照準にしたニッポン放送買収劇からほぼ1年。あれだけ世間を驚かせた資金力の実態が『虚業の楼閣』でしかなかったことを、ブログの書き手たちは解きほぐしている。

 子会社ライブドアマーケティングがマネーライフ社買収で演じた「偽計取引」の流れを図解整理している「ライブドア取引の整理:逆飛ばし疑惑を見てみる」(ちょーちょーちょーいい感じ)はこうみる。ライブドアとマネーライフ社の間に挟まる投資事業組合は「どの株を買って、いつ売って、というすべての判断は通常は運営者(業務執行組合員)に一任されます」「ライブドアが投資をしている組合が出資をしているものの、3つも間に挟んでいるので、2004年6月時点のマネーライフへの投資にライブドアが関与していた、というのは、一般的には実証しがたい」「今回は地検特捜部がメールサーバーなどを全部調べているらしいので、最後まで調査できるでしょう」

 株式交換による買収と株価が高騰しやすい株式分割を組み合わせ、インサイダー取引のように「利益が恣意的に作られたものなのであれば、利益は株価に密接につながっていますので、恣意的に株高が演出されたこととなり、その後、その高い株価を元に買収などで企業価値創出をしてきたのであれば、それは偽札を刷るのと同じ行為になってしまいます」と、問題点を指摘する。地検が狙う本丸は「偽札を刷る」行為だと。

 しかし、複雑な経済事犯で家宅捜索の令状を裁判官から取るのは容易でない。「ライブドアショック・検察の突破口を考える」(ビジネス法務の部屋)は事件の入り口に注目している。「証券取引法が保護しようとしている法益、つまり国民の有価証券の取引における安全性を害するような行為態様があれば、それは処罰の対象とされるわけです」「マネーライフ社の株式について、事実上はすでにライブドアの支配下にある投資事業組合が先に現金取得していたにもかかわらず」「あらたに株式交換という手法によって支配下に置く取引を行った、というものです。錯誤に陥れる相手方は税務署でも、取引相手方でも、一般投資家でもいいわけでして、有価証券取引が公正安全に行われるものと信じるについて保護に値する者に対して、その誤解を招く行為をすれば『偽計取引』に該当する、との判断があるのではないでしょうか」「『犯行目的』など立証する必要はないわけですから、これが最も確実に(おいしく)捜査令状をとれる部分ではなかったか」と推察する。

 「なるほど・・・これが『粉飾』ということですか」(ふぉーりん・あとにーの憂鬱)は本当の捜査目標らしい粉飾決算について考察する。買収時にライブドアの株価が2倍に「跳ね上がったとしましょう。投資組合は、株式交換で得たLD株式を市場で売却します」「この結果、投資組合には」2倍の現金が入る。「投資組合は解散し、財産である現金」を出資者であるライブドアに分配、損益計算書に「のっかる利益が出てくることになります。しかも、この利益をファイナンス事業を営む会社であげれば、営業利益の方に組み込む」「ここで出てくる『投資益』というのは、実質を考えれば、自己株処分差益なわけで、確かに企業会計上の考え方からいえば、本来は『資本取引』ということで損益計算書上の利益には影響を及ぼさないはず」であり、資本剰余金になるべきなのだ。

 自作自演した自社株取引のあぶく銭を営業利益にしなければならない体質を抉り出しているのが「ホリエモンの錬金術 −4」(ホリエモンの錬金術)である。2004年までのライブドア決算を解きほぐし、時々で処理方法が違ういかがわしさを具体的に取り出した上で「違法とされる粉飾決算であるかどうかは、会社の再監査をしてみなければ判断できませんので、現段階での判断は差し控えます」「ただ、適法か違法かの問題は再監査にゆだねるにしても、企業の経営実態を直視する経営診断という立場に立ってみますと、ライブドアは、上場以来、連結でも単体でも全く利益を出していない、それどころか、資本金と資本剰余金までも大幅に食い込んでいるもの(つまり欠損会社ということです)と考えられます」「これが30年間会計屋として飯を食ってきた私の判断です」と主張する。1999年から2004年の決算をつなぎ合わせれば6億円から始まり、477億円を一般投資家から集め、5年後に455億円しか残っていないから27億円余を食いつぶしたとの結論になる。

 ライブドアという会社の本質が、本来の事業で儲けていない虚業であることを明解に示すデータだ。本当の決算書は本業はどうにもならない赤字で、資本集めの項目だけが膨らむことになって誰からも見向きもされなくなる。それを避けるため、偽計行為が延々と繰り返されたのではないか。既に伝えられる中には単純に子会社の利益を赤字の本体に付け替えて黒字化する、お粗末な工作も含まれる。まさしく砂上の楼閣。800億円の社債発行は虚構の好業績と高株価で可能になったのだった。