日銀の利上げ失敗と円安・虚構の好景気 [ブログ時評73]
市場がほぼ確実視していた政策金利0.25%の利上げを、日銀が1月の政策決定会合で断念した。長期に異常なゼロ金利を続けてきた金融政策を正常化するために昨年7月まずゼロ金利を解除、第2段の追加利上げで0.5%を目指したが、政府・与党の反対もあって頓挫した。「日銀VS政府・与党」の構図で語られがちではあるが、本当に好景気なのか――そもそもの疑問が大きくなった。超小幅利上げに反対した側は景気の腰折れを心配している。おかしいではないか。安倍政権は「上げ潮路線」と称して、景気回復による税収増で財政再建は出来ると胸を張っていたのではなかったのか。
次に掲げる四半期ごとの成長率の推移を冷静に眺めれば、ゼロ金利解除前後でトーンが変わったのではないかとの疑問がわこう。国際通貨基金(IMF)の専務理事も、政策決定会合に先だって「急ぐべきでない」と助言していた。 「福井総裁は何を考えているのか?」(未来から見た過去に生きる)は手厳しく批判する。「これだけ福井総裁が批判される理由は『天変地異でも起きない限り、1月に利上げというのが日銀からの昨年のメッセージだった』と取られても仕方のない発言を福井総裁がしていたからでしょう。日本経済の実情を見もしないで、ともかく『金利を上げること』がまず前提で総裁の仕事をするからこうなるのです」「昨年10―12月期の実質経済成長率が年率2%以上の比較的高い伸びとなるとの予測が出ていることは確かですが、この成長は元々石油で指数が上がったから出てきた数値ですから、他の指数は伸びていません。こんなことは民間の経営者でも知っていることですが、福井氏はそれも理解できないで日銀総裁をやっているのでしょうか?」
もちろん政府・与党には低金利の恩恵が大きい。普通国債残高は540兆円を超えているから、1%の利上げは年間5兆円以上の利子増加に直結する。今年度の税収増など吹き飛ばしてしまう。「低金利の功罪」(気ままな生活)は低金利で得をする「住宅ローンを借りている人」「銀行融資を受けている企業」「国債を大量発行している政府」「為替取引で外貨を買っている人」「銀行」「輸出企業」を並べ上げて「得をする人と損をする人と比べてみると、どう考えても低金利で得をするものが多そうだし、この国では力を持っている」と観察している。
「日銀利上げせず」(金小だより)は発想を変えろと促す。「ポイントはいくつもあるだろうが、指摘される点はまず『CPI』(消費者物価指数)だ。福井日銀総裁も利上げのタイミングの最重要参考値と発言している。原油価格の下落がCPI の上昇を抑えると同時に、このまま円安が続けばそれも効かなくなることから原油価格や為替もポイントだ。そして株価と長期金利。特に株価については底堅いうちに利上げをしとかないと、ほんとに利上げできなくなるんじゃないかな。そういう意味で逆に日銀のほうが、CPIが確実に上昇し利上げに支障がなくなるような政策をバシバシやって欲しいくらいの注文をつける」べきだとする。
低金利政策に依存するだけで、自前ではほとんど有効な施策を打ち出せない政府こそ動かなければならないはずなのだ。今回の景気は期間さえ長いものの内需を掘り起こしての自律的な景気回復ではない。一部の大企業が海外で大きく利益を積み上げただけであり、消費者の懐にお金が回るどころか、勤労者の収入は微減の有様だ。既に決まっていたこととは言え、今年に入って所得税からの恒久減税分が廃止になり、確実に家計は縮んでしまう。
昨年は各国で金利引き上げが進行し、日本だけが取り残された。米国の政策金利は5.25%、欧州は3.5%である。内外金利差を利用して国内で安く借り、海外に高金利で預ける動きが広がっている。このため海外通貨に対して大きく円安に振れている。
「日銀の利上げ見送られましたね。」(Skyforブログ)は「今、日本の安い金利が災いして、すごい勢いで円安が進んでいます。日本で学生をしていればそんなに気にしなくてもいい事ですが、留学生にとっては深刻な問題です」と訴える。「例えば、私がイギリスに出発した9月15日の時点での為替相場は、1ポンド=222円。当時は、『うわー、最近レートが悪いなー』と嘆いていました。なぜならその2ヶ月前のレートが1ポンド=211円で、2ヶ月で11円上がってしまっていたからです」「今いくらだと思います、レート?1ポンド=239円ですよ!」「単純に計算しても、100万円の送金が3ヶ月遅れていたら、7万円損したことになってました」
この記録的な欧州通貨高がソニーの次世代ゲーム機には救いなのだという。「欧州がソニー『PS3』を救う ユーロ、ポンドに対する円安が追い風」は日本や米国で売ると1台3万円の赤字になるPS3が、欧州では3000円程度の赤字で済むと報じている。EU諸国は域内貿易比率が大きいので通貨高もさほど苦痛でなく、むしろ基軸通貨としての自信を高めている。逆に円は投げ売りのような状態。こんな歪んだ状況から抜け出すシナリオを描くのは政府であって、決して日銀ではない。
次に掲げる四半期ごとの成長率の推移を冷静に眺めれば、ゼロ金利解除前後でトーンが変わったのではないかとの疑問がわこう。国際通貨基金(IMF)の専務理事も、政策決定会合に先だって「急ぐべきでない」と助言していた。 「福井総裁は何を考えているのか?」(未来から見た過去に生きる)は手厳しく批判する。「これだけ福井総裁が批判される理由は『天変地異でも起きない限り、1月に利上げというのが日銀からの昨年のメッセージだった』と取られても仕方のない発言を福井総裁がしていたからでしょう。日本経済の実情を見もしないで、ともかく『金利を上げること』がまず前提で総裁の仕事をするからこうなるのです」「昨年10―12月期の実質経済成長率が年率2%以上の比較的高い伸びとなるとの予測が出ていることは確かですが、この成長は元々石油で指数が上がったから出てきた数値ですから、他の指数は伸びていません。こんなことは民間の経営者でも知っていることですが、福井氏はそれも理解できないで日銀総裁をやっているのでしょうか?」
もちろん政府・与党には低金利の恩恵が大きい。普通国債残高は540兆円を超えているから、1%の利上げは年間5兆円以上の利子増加に直結する。今年度の税収増など吹き飛ばしてしまう。「低金利の功罪」(気ままな生活)は低金利で得をする「住宅ローンを借りている人」「銀行融資を受けている企業」「国債を大量発行している政府」「為替取引で外貨を買っている人」「銀行」「輸出企業」を並べ上げて「得をする人と損をする人と比べてみると、どう考えても低金利で得をするものが多そうだし、この国では力を持っている」と観察している。
「日銀利上げせず」(金小だより)は発想を変えろと促す。「ポイントはいくつもあるだろうが、指摘される点はまず『CPI』(消費者物価指数)だ。福井日銀総裁も利上げのタイミングの最重要参考値と発言している。原油価格の下落がCPI の上昇を抑えると同時に、このまま円安が続けばそれも効かなくなることから原油価格や為替もポイントだ。そして株価と長期金利。特に株価については底堅いうちに利上げをしとかないと、ほんとに利上げできなくなるんじゃないかな。そういう意味で逆に日銀のほうが、CPIが確実に上昇し利上げに支障がなくなるような政策をバシバシやって欲しいくらいの注文をつける」べきだとする。
低金利政策に依存するだけで、自前ではほとんど有効な施策を打ち出せない政府こそ動かなければならないはずなのだ。今回の景気は期間さえ長いものの内需を掘り起こしての自律的な景気回復ではない。一部の大企業が海外で大きく利益を積み上げただけであり、消費者の懐にお金が回るどころか、勤労者の収入は微減の有様だ。既に決まっていたこととは言え、今年に入って所得税からの恒久減税分が廃止になり、確実に家計は縮んでしまう。
昨年は各国で金利引き上げが進行し、日本だけが取り残された。米国の政策金利は5.25%、欧州は3.5%である。内外金利差を利用して国内で安く借り、海外に高金利で預ける動きが広がっている。このため海外通貨に対して大きく円安に振れている。
「日銀の利上げ見送られましたね。」(Skyforブログ)は「今、日本の安い金利が災いして、すごい勢いで円安が進んでいます。日本で学生をしていればそんなに気にしなくてもいい事ですが、留学生にとっては深刻な問題です」と訴える。「例えば、私がイギリスに出発した9月15日の時点での為替相場は、1ポンド=222円。当時は、『うわー、最近レートが悪いなー』と嘆いていました。なぜならその2ヶ月前のレートが1ポンド=211円で、2ヶ月で11円上がってしまっていたからです」「今いくらだと思います、レート?1ポンド=239円ですよ!」「単純に計算しても、100万円の送金が3ヶ月遅れていたら、7万円損したことになってました」
この記録的な欧州通貨高がソニーの次世代ゲーム機には救いなのだという。「欧州がソニー『PS3』を救う ユーロ、ポンドに対する円安が追い風」は日本や米国で売ると1台3万円の赤字になるPS3が、欧州では3000円程度の赤字で済むと報じている。EU諸国は域内貿易比率が大きいので通貨高もさほど苦痛でなく、むしろ基軸通貨としての自信を高めている。逆に円は投げ売りのような状態。こんな歪んだ状況から抜け出すシナリオを描くのは政府であって、決して日銀ではない。