TV情報番組の捏造にどう対処するか [ブログ時評74]

 捏造疑惑続発のフジテレビ系「発掘!あるある大事典」に続いて、TBS系情報バラエティー番組「人間!これでいいのだ」でも「行き過ぎ」が指摘された。通常の可聴範囲を超す2万ヘルツ以上高周波音の研究者から断られたのに研究論文を掲げ、高周波音は「頭が良くなる音」と断定した。高周波音が出る風鈴を茨城の学習塾に運び込み、生徒が勉強する風景を撮影して塾の責任者に「勉強に役立てている」と言わせたのだから「捏造」と言って差し支えない。

 視聴者にも呆れを通り越した驚き、さらに面白がりが見られる。「捏造がいっぱいあるある大事典♪」(kakokakokakokakokakoのつぶやきどすえ〜♪)は「よほどマイナーなものやよほど曲解して紹介している場合もあるのだろうけど、とりあえずは一応どこかにあるものを『発掘』して来て、それをセンセーショナルに取り上げてるんだろうと思っていた。しかしその『学説』自体すらが捏造まがいだったの?」「こりゃまたもう、面白過ぎる!」「でもなんにせよ、わくわく楽しい『捏造』騒動♪」「いい加減だということは、ある程度は見る方も承知の『お約束』だと思ってたんだけど、あそこまでいい加減だったとは♪ほんと笑える!」「いやはや、ほんとに今さらながらマスコミっていい加減ね!と楽しめた次第でした。ほんと、怖いですね」

 ただし、取材される側のプロ、研究者らには冗談ではない話である。実は同様な「取材」が他の場面でもまかり通っているらしい。「マスメディアの内容の真偽について」(霞が関公務員のLateral Thinking)はこう証言する。

 「先日などは、とあるテレビ局の記者(かなり偉い立場の方)から取材を受け、とある法律の内容について説明を求められ、これについて色々と手間をかけて内容を教えたにもかかわらず、誤った内容をテレビで喋られた。取材中のやりとりでは、『こういう理解ではまちがっていますか?』と聞いてきたので、『少し違います。こうです』と正しい理解を示し、『法律の内容ですし、これから関係者にも周知を図っていく必要があるのでここで誤った情報が流れると誤解を招いて困ります』と伝えたにもかかわらずである。相手は『まぁ完全に間違いでなければいいですよね』とか、『それではニュースとして面白くないので、何とかこの内容で』とか粘ってくるのだが、結局は無視して押し切られた形である」「事実に反することを流して番組が中止に追い込まれた例について、非常に話題になったばかりなので皆さん記憶に新しいことと思うが、それと何も違わないのだ。政府機関にわざわざ取材をして、事実を確認しておきながら、面白いニュースになるからと誤った情報を流すのは『捏造』である。残念なことに非常にこうした手合いが多い」

 ここまでマスコミ側の倫理がいい加減なら、メディアリテラシーの問題だとはっきり宣言するしかない。

 「テレビは好きですか。」(大学生の告白)は海外に留学している立場から、テレビとの関係を相対化して説く。「ではでは、『テレビが全てだと思ってる人』はどうですか。私は、そういう人とは話が合わない。もっと正確に言うと、『情報源をテレビばかりに頼っていて、自分から真偽を確かめようとしない人』と、話が合わない」「テレビはテレビなんだ、製作する人がいて、製作する人には『考える頭』があるんだってことをもっと理解する人が増えてほしい。じゃないと、やりたいようにやられっぱなしになっちゃうと思う。自分の頭で考えることが苦手になっちゃうんじゃないかな」「私の友達は、『日本は平和だねぇ、納豆のことでこんなに騒ぐんだもん』って言ってた。確かにそれもあるけど、単にそういうことだけでもない。納豆騒動のことを大きく取り上げるのもテレビ。大きく取り上げた納豆騒動の裏に何があるか、製作者サイドの視点を考えないと、泥沼に嵌っていってしまう」「日本から離れてみて、より一層そんな風に考えるようになりました」

 多くの家庭や職場で自由にインターネットが使えるようになった。「あるある」捏造発覚のきっかけになった納豆ダイエットだって、調べたければ、きちんとした機関が収集した情報を得ることが出来る。

 独立行政法人、国立健康・栄養研究所が開設している「『健康食品』の安全性・有効性情報」にある「健康食品」の素材情報データベース(50音別・アルファベット別一覧)で「ナットウ(ナットウ菌)」を調べよう。「すべての情報を表示」ボタンを押しても、「ヒトでの評価」各項目は「調べた文献の中で見当らない」がほとんどなのが分かる。納豆を使ってされた定量的・定性的な研究が極めて少ないからだ。なら「ダイズ」で調べよう。こちらには循環器などに様々な研究成果の抜粋があるが、肥満については「調べた文献の中で見当らない」としか書かれていない。

 たった、これくらいのリサーチをしない、出来ないプロデューサーが番組を作っているのが、テレビ界の実情だと知ることができる。「あるある」制作元・関西テレビは「何度もチェックをした。下請け、孫請けの問題」と言い逃れようとしている。視聴者の多数が、こうした公開データベースを使うようになればTV情報番組は存立基盤を失おう。