中国の酸性雨拡大にみる越境汚染の怖さ [ブログ時評82]

 北京五輪まで1年。ホッケーの五輪テスト大会開幕戦で中国に敗れたアルゼンチン女子チーム選手たちは顔を真っ赤にしながら肩で息をしていたと、朝日新聞が伝えた。暑さに加えて空気が悪く、深く息をすると息苦しくなってしまうのだという。北京の大気汚染物質は2004年頃までは、やや減少傾向とも伝えられたが、止まらない高率成長を受けて制御どころではなく、昨年、今年と深刻なニュースが目立つ。

 まず日本から中国に渡った人の現地報告。「おばさん、ノドに激痛。」(おばさん、中国に渡る☆)は酷暑なのに風邪症状が続いて止まず、思い当たった。「『目…異物感、チカチカする、涙が止まらない、痛い…など/呼吸器系…喉の痛み、咳、呼吸が苦しい…など/皮膚…赤みを帯びる体質等により重症になる場合、嘔吐、意識障害、発熱などの症状が現れることも…』の症状に、ノド以外のこともほぼ同じ」「こりゃ〜〜光化学スモッグにノドがやられたんだ!!!」「こちらに一年以上いる人に聞いてみたら、『そうよ、ここは年中、光化学スモッグ出ているよ、だから年中薬飲んでるわ』と、さらりと答えてくれた」と信じがたい汚染の渦中にいることをリポートしている。

 2006年4月の「大気汚染が悪化、火力発電が原因『北京も酸性雨』」(中国情報局)は中国環境規制院が記者会見で「2005年における中国全土の二酸化硫黄の排出量が2549万トンとなり、目標を749万トンもオーバーしていることを明らかにした。また2000年と比べて25%増となり、北京市にも酸性雨が降るようになった」と公表した。エネルギー消費は5年前の55%増だという。

 もともと中国南部の酸性雨はひどかったが、最新のデータは絶望的だ。「中国広東省:酸性雨汚染深刻、降雨量9割を占める」(大紀元時報)は今年7月に広州熱帯海洋気象研究所が「広州市は今年最初の3ヶ月における酸性雨の降雨頻度は100%で、平均酸性度はpH3.8だとし、平均値がpH4のお酢よりも酸性が強いと指摘した。今年4月、5月における酸性雨の降雨頻度もそれぞれ90%と80%で、総合して平均にすると、10回の降雨で9回が酸性雨である」「酸性霧雨の中の有害物質は酸性雨より数百倍も高いことは研究で明らかになった」「霧雨は体内に吸入しやすく、呼吸道粘膜を害し、呼吸道疾病を引き起こす」と伝えている。

 酸性雨とはpH5.6以下の酸性度を示す雨のことで、湖沼で魚が住めなくなるのはpH5以下だとされている。日本の食酢はpH3前後であり、広州の観測値がいかに途方もない数字か理解いただけよう。河川に生き物がいなくなったとのニュースはあちこちで見られる。

 北京など中国北部はこれまで土壌がアルカリイオン成分を持っていて酸性雨発生を抑制していた。しかし、その「聖域」は2006年に失われた。「中国の7省・直轄市に酸性雨が拡大、16地点調査では平均pHが4.5」(IBTimes)は「中国の南方地域で頻繁に見られる酸性雨は2006年に長江を越え、北に向かって北京、天津、河北、山東、河南、陜西、山西など北部の7つの省と直轄市にまで拡大している。中国気象局は『2006年度の全国十大気象事件』の事件の1つとして取り上げたことから、大きな話題となった」「酸性雨が降る都市は2000年の157カ所から2005年の357カ所に増加。2000年の時点で酸性雨は北部の一部でのみで発生したが、2006年は7つの省と直轄市で深刻な酸性雨が頻繁に見られるようになった」とする。

 「中国、あるいはオリンピックはできるのか」(あいあ〜る村塾)は7月中旬に「本日の英国ガーディアンの記事を読むと、これは心配性の人でなくとも、ぞっとするようなことが書かれている」とOECD調査を引きながら危惧している。「1億9千万の人が、水が原因で病気に苦しんでいる」「主要湖水の75%は高度に汚染されている」「『グリーンオリンピック』の装いに凝らしている北京も、途方も無い成長の恐るべき結果から逃れてはいない」「一昨日も昨日も今日も北京の空は硫黄スモッグで暗く、あまりにもそれが濃いものだから摩天楼もスッポリ飲み込まれている」「空気の質があまりにも悪いものだから、時には、学童は休み時間でも屋内に留まるよう警告が出されている」「こんなところで42キロもマラソンできるのかね。日本の陸連と水連はよくよく考えて、参加するか否か決めた方がよいのではなかろうか」

 この大気汚染が東側にある日本に及ぶ有り様を、国立環境研究所のコラム「大気汚染物質の流れが見える酸性雨長距離輸送モデル」が「つの」型の吹き出しと、「巨大パフ」型の輸送として観測日を挙げながら図示している。改めて怖くなる一衣帯水ぶりだ。

 「広域化する『光化学スモッグ』」((気象・歳時・防災 コラム!)が一時は治まっていたのに国内各地で再発、増加する光化学スモッグの原因をまとめる。「ヒートアイランド現象によって、汚染物質が濃集しやすい環境になっている▽オゾンホールによって紫外線量が増加し、光化学反応に要する時間が短縮しつつある▽風上の中国から一次汚染物質がもたらされている」「特に中国の影響は甚大で、汚染対策が改善されない限り一次汚染物質の排出は今後も加速すると考えられます」

 今年5月に関東から九州にかけて大発生した光化学スモッグは、中国大陸で発生したオゾンが主な原因だったと考えられている。既に国内で観測される硫黄酸化物の半分は中国起源とみられる。この隣人の環境汚染制御こそ、日中両国間の主要課題とする日が迫っている。