団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

裁判員制度実施へ最高裁意識調査の偽計[BM時評] (2008/04/13)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 裁判員制度が来年5月21日に実施されると報じられました。最高裁が全国規模の意識調査をして、有権者の6割は消極的な人を含めて裁判員になる意向だったことが根拠になっているそうです。信濃毎日の社説「裁判員制度 不安解消の課題はなお」が「市民の理解と関心は本当に深まったのだろうか。意識調査で参加の意向を示した人の内訳を見ると、『参加したい』『参加してもよい』と答えた人は合わせても16%にしかならない」と異議を唱えるなど、少数のメディアは疑問としています。

 詳しくは「裁判員制度に関する意識調査」結果でご覧になれます。「『参加したい』『参加してもよい』という方のほか,『義務なら参加せざるを得ない』という方まで含めると,20代〜60代の約65パーセントの方が参加意向を示していることが明らかとなりました」と主張するのですが、以下の集計グラフを見てください。選択肢が「参加したい」「参加してもよい」「あまり参加したくないが義務なら参加せざるを得ない」「義務であっても参加したくない」「わからない」の5本しかなく、3本は「参加する」結論、「参加しない」結論は1本しかないのです。このような非対称の選択肢設定は「わからない」層を中間的な答えに誘導する偽計です。二流メディアが自分の主張に説得力を持たせようと予定調和を意図する世論調査によく現れます。裁判員制度タウンミーティングでの「やらせ」多数発覚といい、最高裁が世間常識を知らないことに驚くばかりです。


 職業別に参加意向の割合をみると、比較的時間に余裕がある「学生」を除いて壊滅的ですね。専業主婦やパート・アルバイトからも拒否されている感じです。普通に職業を持つ人には「減収をどうしてくれるのだ」といった思いだってあるでしょう。最高裁は1日の日当を最高1万円とする意向のようです。弁護士さんの書く「裁判員の日当」は「報道によれば、日当を1万円以下とするという方向で検討がなされているようですが、どうしてそのような話になるのか不思議でなりません」「刑事裁判の法廷の中で、そのような低い時間単価に甘んじているのは、被告人と証人を除けば、弁護人しかいないではないですか。裁判長が1日あたり4〜5万円の給料をもらっている状況の中で、なぜ裁判員の日当が1万円以下なのでしょうか」と疑問を投げています。

 ちょっと気になったので、陪審員制が定着している米国の例を取り上げているウェブを探してみました。「皆さん、こんにちは。=ダラスの知人より(四)=」が「従業員への陪審員活動中における給与は雇用者が支払う義務はありませんが、殆どが支払っているようであり、わが社も当然支払います。(わたくしの給料は誰が払ってくれるん?)そうでないと社員は生活が出来ません。陪審員選出期間の日当は従来は$4でしたが、前回行った時は$6でした。終わりの日に小切手をもらうわけですが、ここでもまたアメリカらしいのですが、寄付するかどうか聞かれます。3日分でも$12ですから、ガソリン代、昼飯代にもなっておりません」とレポートしてくれています。

 最高裁によると「裁判員裁判の9割は5日以内に終わる」との触れ込みですが、この期間で終わらない、法廷で自白を撤回する大型否認事件に遭遇したら、どこまで続くのか誰にも分からなくなります。米国のように会社が負担する習慣がない訳ですから、日当1万円を貰っても損害が大きくて話にならないでしょう。今日の日経朝刊1面に、裁判員が受ける心の傷をケアするシステム導入の話が出ていました。死体の写真に局部の解剖写真など普通の人には無縁のグロテスクなものを見せられ、判決で死刑を言い渡しでもしたら心に引きずるものがありますよね。残り1年になってからの最高裁「泥縄」ぶりに加え、大手メディアにはジャーナリズムとして論ずるべき責任を放棄した印象があります。



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