自民総務会長が理解せず:後期高齢者医療 [BM時評]

 朝刊を読んでいて、ふき出してしまったのが、今日5月21日の朝日新聞政治面です。ネットに提供されている記事は新聞記事の何分の一でしかありません。この記事「後期高齢者医療制度に欠陥、行き詰まる 堀内光雄・元自民総務会長に聞く」もネットでは全く読めません。改革の発端、2003年の医療制度改革基本方針決定時に、自民党三役の総務会長を務めていた人が「説明不足ではなく、制度自体が問題。改めないと騒ぎが大きくなる」と、「制度は悪くないが、説明不足だ」と言っている福田首相に進言しているというのですから、廃止法案を出す野党と同じ考えの人が自民党幹部にいる訳です。

 「今ある保険制度は若い人だけにして、医療費のかかるお年寄りには出て行ってもらう。保険制度を守るためにはあなた方は外に出てください、というのは『姥捨て山』以外の何ものでもない」とはっきり言われています。それにしても2003年にはどう思っていたのでしょうか。「よく精査しなかったのかもしれない。忸怩たるものがある。実を言うと、私も(制度を告知する)通知が来るまでわからなかった」そうです。これが当時の与党大幹部なのですから、ほぼ唖然と言うしかありません。これほど明確な反対論でなくとも、自公与党内では制度手直し議論の真っ最中です。政治面はかなり詳しく伝えています。

 JMM [Japan Mail Media] の5月13日号に中村利仁・北大大学院医療システム学分野助手の投稿「読者投稿編:Q:910への読者からの回答」が掲載されていて、「この制度の合理性を巡る議論は2年前に既に終わったはずの話です。専門家の間でということであれば、さらにそのちょっと前に終わっています。国会内での取り引きや審議も為されました。それなのに特に与党代議士の過半が、ただ小泉改革の勢いに引っ張られたというだけでなく、本当にどういう内容なのかを全く理解していなかったらしいということが報道されるにつけ、報道内容を疑うと同時に、もし本当だとしたらどう考えればいいのか、ちょっと途方に暮れている気持ちがあります」とあります。

 同感です。これは何と言っても、お約束違反です。議院内閣制で政策決定しているのですから、今になってこんな発言が出るのは酷すぎます。それにしても、医療費がかかり、収入が少ない後期高齢者だけを切り出して別の保険にしたのはやはり筋が悪すぎると言うべきです。「保険」ではありえませんし、嵩む赤字をこれ見よがしにして医療の実質的制限に走るのが見え見え――悲惨でしょう。

 JMM投稿の結論部分に「以上見てきたように、後期高齢者医療制度については、この合理性を享受できる立場と享受できる特徴の組合せが複数あります。他方、ほとんどメリットがなく、デメリットばかりが目につく場合も少なくありません」とあります。熟知している専門家がそう言うのならば、この制度が次の国政選挙を経て生き残っていく可能性は薄いと見ました。