団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

NHK第三者委の報告書は悲惨で面白い [BM時評] (2008/05/29)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 NHK記者らによるインサイダー取引事件で第三者委員会が報告書を公表したとの28日朝刊記事を読んで、隔靴掻痒の思いをされた方が多いでしょう。勤務中の株取引が81人あったなど、新味はあるけれどインサイダー取引でもなく、それがどうした、です。批判するブログ記事も呆れるばかりで、今ひとつピンとこないものが多い感じです。この報告書は「職員の株取引に関する第三者委員会 調査報告書」で全文が公開されていて、長文の(2)「調査報告書(本文)」を拾い読みしたら、細部がなかなか面白い、いや、こういう行動をする報道機関の仲間を持っていたのかと悲惨な気分になります。

 調査に強制力はありませんから、株を本人・家族が持っていることを申告してもらわねばなりません。その一方で、情報提供窓口を設けて、職員からの通報を募っています。16人が株取引を名指しで通報され、自主申告していたのは7人だけでした(71ページ)。残る9人のうち5人は聞き取り調査で認めたそうですが、4人は否認のままのようです。保有の有無を申告した後、自己修正を認めました。これは「やはり持っていた」と応じてくるのを期待しての措置ですが、逆に否定するケース続出です。いったん株取引まで認めておきながら持っていなかったとしたケース「本人口座で14名、家族口座で81名もあるが、その信憑性は低いといわざるを得ない」と断じています。

 さらに取引履歴調査に進むには証券会社に出す委任状を貰わねばなりません。ここで株保有を認めた2724人中の943人が有効な委任状を出さず、一部は明白にサボタージュしていることが読みとれます。中でも75〜76ページには<プライバシー侵害><プライバシー・財産権が優先><報道機関の特性><株保有調査への不満>について拒否理由が載っています。一つ拾うと「社会正義の実現を目指してジャーナリズムの世界を40年近く過ごしてきたものとして、私有財産を他人に開示したりプライバシーが侵害されたりする恐れがあるような理不尽な要求には、安易に従う気になれません」だそうです。驚くべき理屈です。

 要するにこの調査は、潔白か灰色までの方が、ちょっと良心的に応じて出来上がったもので、黒の方は参加していないのです。

 第三者委員会は報道の自由との関係を重視した、しっかりした立ち位置を持っているようですが、NHK執行部からはそれが感じられません。「NHKはジャーナリズムを」は「残念ながら福地会長は『就業規則に違反があれば処分する』というだけで、ジャーナリストとしての言葉は微塵もない。ただの民間企業経営者を公共放送のトップにすえてしまった。ジャーナリストでないものを経営トップにもってきたNHKの不幸がこうも簡単に露呈している。第三者委員会は職員と同時に会長を監査しなければならない」と批判しています。

 第三者委はインサイダー取引に止めず「国民の受信料で得られた報道情報を私的に利用するのは国民全体への背信行為だ」との立場を明確にしています。



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